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【MLB】秀逸な企画を実行するドジャースのファンとの交流とは!?

 

イベントに参加し遊技場設置のため土台のセメントを作る前田健太(中央奥)。メジャー球団はファンと触れ合える機会を多く作っている


 ドジャー・スタジアムは5年連370万人動員、メジャー30球団断トツの1位である。その理由は5年連続ナ・リーグ西地区優勝の好成績もあるが、地元コミュニティーとのつながりを大切にし、時間をかけて人々との絆を育んできたからだと思う。

 現地時間1月26日のことだった。ロサンゼルス郊外のアルハンブラ公園。1月8日から閉鎖されて更地(さらち)となっていた。

 そこにドジャースの選手たちが現れ、1日で子どもたちの遊技場を作ってしまう企画を実行に移した。午前9時から午後3時までの6時間で、選手たちは3組に分かれ交代でバスに乗ってはせ参じた。前田健太投手も参加。2組目11時からのグループで、青空の下、昨季の新人王、コーディ・ベリンジャー一塁手らと一緒にジャングルジムを組み立て、セメントを水で練って遊具の土台に流し込むなど汗を流した。普段着にユニフォームを羽織っている。

「アメリカでは球団がこうやって地元の人たちのためにいろんな活動をする。少しでも協力できれば」と背番号18。エース左腕クレイトン・カーショーは13時からの「トリ」のグループで、デーブ・ロバーツ監督らと遊具を仕上げた。大人の熱心なファンから「(ケガしないよう)右腕を使ってね」と声がかかる。子どもたちが憧憬の眼差しで見守る。

「地元の人たちはシーズンを通して僕ら選手をサポートしてくれる。交流は楽しいし、みんなの役に立てて嬉しい」と背番号22は語る。

 このイベントは「LOVE ロサンゼルス・コミュニティツアー」と銘打ったオフの常連企画で15年目になる。過去も黒田博樹投手が病院を訪ね重病患者を見舞ったり、斎藤隆投手がリトル・リーグの球場で野球の基礎を教えたりした。今年も1月22日から26日まで、選手、コーチ、OB、TV解説者らが手分けしてロスの各地に散らばり、12個のイベントに参加した。

 22日は消防士350人を球場に招待した。11月、12月南カリフォルニアで猛威を振るった山火事と戦った街の救世主たちである。昼食会のあとジャスティン・ターナー三塁手らとケージで打撃練習に興じてもらった。

 25日は、ヤシエル・プイーグ外野手ががん闘病中の11人の子どもたちを「プイーグのピザとシェーブ(SHAVE)パーティ」に招いた。髪の毛を失った子どもたちにプイーグの髪の毛をバリカンでそってもらう。「子どもたちは病院で何度も手術を受け、日々戦っている。これで喜んでもらえれば」と、プイーグはがんとの闘いで連帯を誓った。

 他球団でもファンフェスタなど交流イベントを開催しているが、ドジャースは主力選手の出席率が高く、しかもアイデアが独自で工夫がある。一日で遊技場を作ってしまうなんて秀逸だ。念のために書けば、遊技場はすべて選手だけで作るわけではない。ドジャース、アルハンブラ市、子ども向けの慈善団体の3団体によるコラボ企画で、専門のスタッフやボランティアが先導する。選手たちはぎこちない手つきではあるけれど、一緒に一つひとつ組み立てていく。休憩の間に、集まったファンと記念写真を撮り、サインをする。

 彼らが作ったドジャースのロゴ入りの遊具は、これから数十年間この場所で子どもたちが使い続ける。世代を越えてコミュニティーとの絆が育まれていくのだ。

文・写真=奥田秀樹
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