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甲子園ヒーロー列伝

下関商・池永正明、圧巻の野球センスが光った天才投手(甲子園ヒーロー列伝04)

 

高校生とは思えない投球術が光った


 高校2年春。16歳のピッチングは、すでに完成されていた。下関商・池永正明。身長は175センチと、さほど上背はないが、運動神経がよく、全身まさにバネだ。

 中学で野球を本格的に始め、1年夏からレギュラーとなった。合間に、陸上の大会にも駆り出され、当時の走り高跳び、砲丸投げ、80メートルハードルの三種競技で山口県記録を作ったという。

 下関商では1年秋の新チームからエースに。期待どおり中国大会で準優勝し、センバツ出場を決めた。

 甲子園初戦は、優勝候補の一角にも挙げられていた明星(大阪)だったが、5対0と快勝。しかし、2回戦の海南(和歌山)戦は延長16回、自らのサヨナラ打で勝利、続く準々決勝は御所工(奈良)相手に9回に3点を取っての逆転勝ち、準決勝の市神港(兵庫)戦も1点を先制されての逆転勝ちと、苦しい戦いが続いた。

 ただ、決勝の北海(北海道)戦は10対0と大勝。試合後、インタビューを受けた池永は、イヤホンを通じてスタンドの父親と会話。感極まって涙を流す父親に対し、「父さん、泣かんでいいよ」と声をかけた。

 夏も山口大会で5試合連続完封。うち柳井戦では完全試合で連続甲子園を決めた。

 ただ、甲子園では1回戦完封の後、アクシデントが待っていた。松商学園(長野)戦。三塁へのヘッドスライディングの際、左肩を脱臼。大したことがないと思っていたが、1球投げて驚いた。
「痛みが襲ってきた。タイムを取って痛み止めの注射を打ったがまったく効かない」(池永)

 左腕を固定したまま続投。なんとか勝利を飾ったが、3回戦の首里(沖縄)戦は投げていない。それでも準々決勝の桐生(群馬)戦、準決勝の今治西(愛媛)戦には勝利し、決勝で明星に敗れている。

 次の年のセンバツは、指のけんしょう炎もあって初戦敗退。夏は山口県大会の初戦で0対1で負けた。

 池永は、その後、西鉄ライオンズ入りし、わずか4年で99勝を挙げたが、70年途中、103勝で、その野球人生は強制終了となった。
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