26日、サヨナラのホームを踏んだ関本。背中は広澤克実
「サヨナラはもうええわ」
指揮官はそう言って笑った。苦笑に近い雰囲気もあったが、その表情は、いわば“会心の苦笑”と言っていいかもしれない。
星野仙一監督が就任1年目の2002年
阪神。闘将の下、開幕から首位を突っ走った阪神だが、6月のワールドカップ期間中に故障者続出と変則スケジュールにも翻ろうされ、大失速。同じく新指揮官の
原辰徳監督率いる
巨人に一気に抜き去られた。
前任の
野村克也監督時代も序盤に首位に立ったことはあったが、落ち出すと一気だった。
おかしな言い方になるが、星野監督は「負け方」にこだわった時期だったと思う。
要は「最後まであきらめるな」ということだ。
7月26日の対
中日戦(甲子園)は、そんな星野監督の思いを阪神ナインが受けとめた1勝と言えるかもしれない。
先発・
川尻哲郎が初回、2回と1点ずつを献上。
桧山進次郎、
今岡誠を故障で欠く阪神には大きなハンデである。
しかし、5回に打率3割の八番打者・
矢野輝弘が適時打で1点差、さらに
赤星憲広がセンター前に2点適時打でひっくり返した。
中日も踏ん張り、8回表に追いついたが、阪神は9回裏、矢野がレフトに快打。これを
蔵本英智がはじき、その間に一走の
関本健太郎がサヨナラのホームを踏んだ。
4対3。これで24、25日の対巨人戦に続いて3試合連続のサヨナラ勝ちとなった。
前の2試合を簡単に振り返る。
舞台は同じ甲子園だが、相手は首位・巨人だった。
24日は3点をリードされながらジワジワ追いつき、9回裏二死から濱中おさむがサヨナラ弾。「二死だから狙って打ちました」と声を弾ませた。
さらに翌25日は4点を取りながら8回表に
ムーアが
松井秀喜に2ランを浴び、9回表にはバルデスが打たれて4対4となった。
しかし、その裏、一死満塁から
沖原佳典がライト前に落としてサヨナラ勝ち。
この日、巨人先発の
入来祐作が7回裏、
アリアスの背中方向へのとんでもないボール球を投げ、アリアスは「狙った」と判断。血相を変えてマウンドに歩き始めた。
入来もまた、「来るなら来い」とグラブをたたきついた。
そこから両軍もみあい。星野監督は、巨人・
村田真一コーチの胸ぐらをつかみ、遅れて出てきた
清原和博には「お前が出てくるな!」と右肩を押す。
指揮官の貫録たっぷりに暴れっぷりを(見方として)初めて見た虎ナインが奮い立ち、サヨナラにつなげた、と言ってもいいかもしれない。