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【心揺さぶる名言】香川伸行「重い体を支えてくれた下半身に感謝します」

 


 出生時の体重は3700グラムで、小学2年で野球を始めたのも「肥満児にならないように」という母の思いからだった。甲子園通算5本塁打を放ち脚光を浴びた浪商高時代、171センチ、92キロの丸々とした肉体からついた愛称が「ドカベン」。1979年秋のドラフトで南海から2位指名を受けると、愛嬌あふれるキャラクターに取材やCM出演のオファーが殺到した。

 だが、迎えた合同自主トレ初日、オフの練習不足により体重は106キロに増加しており、わずか35分でダウンするという醜態をさらしてしまう。以来、香川には「減量問題」がついて回った。

 2年目に就任したブレイザー監督は食事制限とともに、月に一度の体重測定を義務付け、増えていれば罰金を課した。だが、当の本人は「動ければそれでええやろ」と問題にせず、体重は100キロ前後を行ったり来たり。

 巨体ゆえのケガにも苦しめられていたが、突然の打撃開眼を見せたのが4年目の83年。新任の穴吹監督は香川の体重について言及しない方針を示し、その解放感からか、首位打者を争う好調ぶりでレギュラーに定着し初の打率3割をマークした。

 以降は出場機会が減少する一方で体重は増加の一途をたどり、130キロ超えが報じられたこともあった。それでも「グラウンドで動ける体であれば、それでええんや」と最後までスタンスを変えなかった香川。わが道を歩んだ“無差別級”スラッガーは10年目の89年シーズン後、「これまで重い体を支えてくれた下半身に感謝します」と言い残しユニフォームを脱いだ。

写真=BBM

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