楽天時代から柿澤にはさまざまな噂がありました。そこでしっかり更生させるための術を球団が持っていなかった。私にも責任はありますが、そこが大きな問題であったと思います/写真=BBM
楽天の指導者時代に感じていたことがあります。組織がしっかり出来上がっていないと、監督として現場を指揮するには限界があります。ゲームを指揮するだけではなく、組織をまとめる意味で、監督の権限だけでは何もできないことがあることを痛感しました。今週から、楽天OBとして未来へ向け楽天が素晴らしい球団になることを願って、私なりの提言をしたいと思います。
7月初旬に
巨人の
柿澤貴裕が契約を解除されました。柿澤は私が楽天二軍監督などで指導をした選手です。今回、巨人で窃盗などの疑いがあり、さらにそれを売却しての契約解除。そういう噂は楽天時代からあったのは事実です。
二軍監督時代に球団関係者から相談を持ちかけられました。「柿澤が寮などからほかの選手の貴重品などをくすめているという噂があります。選手たちが、気持ち悪がったり、彼を無視したりしているようです」と。
組織の中で、そういうことがあってはチームが一つの方向を向くのは無理な話です。少しでも疑いがあれば、組織としては機能しない。それはどの会社でも同じだと思うのですが……。そこで柿澤を二軍監督室に呼びました。もちろん、球団の二軍担当も同席しています。
「周りから、お前がいろいろなものを盗んでいるという噂が出ているらしいが、本当か?」とはっきりと聞きました。彼は「絶対やっていません」と主張します。そこで私は「日本の法律では“疑わしきは罰せず”だ。信用する」と言い、その場は終わらせました。ただ、確実に物はなくなっているわけです。
二軍監督は、このあと球団に報告し、どう予防し、チームをまとめるか、が仕事です。窃盗などの専門の警察官の知り合いに相談し、監視カメラなどを設置したほうがいいというアドバイスをもらいました。そこで球団に、このことなどをしっかり報告し、改善策として「まずは寮やロッカーなどに監視カメラを設置してほしい」という要望を出しました。
答えは「了解した。今はまだ待ってほしい」。お金がかかるのは分かります。ただ、抑止力としては非常に効果的なはずで、予算がかさむときはニセの監視カメラでも精巧に造られており、十分にその効果はあるとも言われています。それも含めてのお願いでした。約1週間待っても球団は動かない。それ以降も何もなかったのです。そこで私は、チームの雰囲気も考えて、二軍監督として取れる精いっぱいの責任を果たそうと動きます。その話は次回で。
今回の柿澤の件は、もちろん私にも責任はあると思っています。しかし、それ以上に球団が組織としてしっかり管理し、予防する術があったはずで、この組織としての未熟さが、柿澤を救えなかった。一方
西武は、今春に未成年の
今井達也が喫煙をしたとき、どういう罰を与え、どういう更生方針を示したか覚えていますか? 厳しい罰を与えました。組織として成熟した西武ならではの迅速な行動。一方、楽天は……。