セ・リーグの覇者・巨人を相手に4連勝と圧倒的な強さで、ソフトバンクが3年連続で日本シリーズを制した。その中でひときわ輝いたのが、支配下1年目のスピードスターだ。大舞台でも臆することなく、颯爽と駆け抜け、チームを勝利、日本一に導くキーマンとなった。 取材・構成=菅原梨恵 写真=榎本郁也、小山真司、毛受亮介、高原由佳、湯浅芳昭、内田孝治、高塩隆(日本シリーズ) 大舞台で光った状況判断
開幕直前に支配下をつかんだ周東佑京は約7カ月後、日本一を決める頂上決戦で躍動していた。第1戦では快足を飛ばし、第2戦では相手バッテリーを翻ろう。その“足”があったからこそ、チームは本拠地で2連勝を飾り、勢いそのままに4連勝で巨人を打ち破ることができた。 ──日本一おめでとうございます。
周東 ありがとうございます。
──初めての日本シリーズはいかがでしたか。
周東 お客さんの入り、雰囲気がいつもとは違うなと思いました。チームとしてはシーズン中、クライマックスシリーズ(CS)よりか、みんな楽しんでいる感じがありました。最後だし、悔いのないようにやろうと。
──周東選手自身、緊張感は。
周東 僕自身もCSが一番緊張しましたね。特にファーストステージ。ファイナルステージの
西武戦は点差が離れていることも多くて、僕が出る展開では少し余裕もあったので。そこまで緊張しませんでした。日本シリーズ第1戦(10月19日、ヤフオクドーム)で出番(7回、
松田宣浩に代わって代走で出場)が来たときも、緊張はしましたけど、CSほどじゃないなと思いました。
──強心臓ですね。
周東 シーズン中と変わらず、いつもどおりやろうと思っていましたね。
──シリーズ第2戦(10月20日、ヤフオクドーム)でも0対0の7回無死一塁で、一走の
デスパイネに代わり出場しました。
周東 あの場面では、走るよりも相手バッテリーを警戒させてやろうと思っていました。
──結果として、3度のけん制の後、周東選手を意識し過ぎたのか、
大竹寛投手は打者に対してボール先行。3ボール1ストライクからの5球目を
グラシアル選手が左翼前に運んで一気に三塁に。状況判断が光ってチャンスを広げました。
周東 塁上での状況判断は今年、自分でも成長した部分だと思います。本来の僕は代走で出たら「走りたい、走りたい」となってしまう。でも、ただ走るだけじゃなくて、もっとチームの勝ちにつながるようにと考えるようになりました。
──気持ちに変化が生まれたのはどうしてでしょう。
周東 試合の中で気づくこともありました。走ったけど、「今の場面、もっとほかにできることがあったのでは」と考えたりして。試合を重ねていくうちに、何をすべきかの判断が自分でもできるようになりました。試合に出る前に秀平(
福田秀平)さんとかと「この投手だったら(盗塁)いけますか?」と相談して、いけなかったら「こうしよう」とか助言をしてもらうことも。先輩方のアドバイスは本当に参考になりました。
──走塁は以前、シーズン中にインタビューした際も手応えを口にしていましたが。
(関連記事→
「ソフトバンク・周東佑京インタビュー 高みを目指して颯爽と」)
周東 変わらず、ですね。でも、もう少し良くなるところは多いかなと思い始めました。
──具体的には、どんな部分でしょうか。
周東 スタートの飛び出しや、スライディングも、もっと強くできると思います。
──以前、話していたリードの幅も、ほかの選手より際立って大きいと感じます。
周東 大きいですか? 僕の場合、スタートが得意じゃないので、出られるところまで出たい。そうすれば、少しスタートが遅れてもその分で稼げるかなとは考えています。今の位置でも結構余裕を持って戻れるので、スタートをもっと磨けば、もっと成功率も上がるし、今は無理かなと思っている投手からも盗塁を決められるのではとは思います。

ほかの選手より大きいリード幅は相手投手に脅威を与える
──これはシーズン中からですが、周東選手が出る場面でのファンの歓声が日に日に大きくなっていました。どのように感じていましたか。
周東 正直なところ、あまり気にしていないんですよね。僕自身、注目されるのが好きじゃないので、あまり聞か
ないようにしているというのもあるんですけど。
──今季、その足で「周東佑京」という名前は全国区になりました。
周東 いや、まだまだです。日本シリーズ第4戦(10月23日、東京ドーム)でも失敗しましたしね(9回、松田宣の代走でけん制死)。最後の最後、ああいう形で終わってしまったのは、後味が悪いです。
──チームは日本シリーズ4連勝。ポストシーズンから数えると10連勝で日本一を決めました。周東選手は、チームの強さはどこにあると思いますか。
周東 ここ一番の“集中力”でしょう。点が欲しいところでみんなで取りにいきますし、1点もやれない場面ではしっかりみんなで守る。特にポストシーズンはそういうところが顕著に出たと思います。僕はベンチスタートでしたが、スタメンで出ている先輩方の姿はとても頼もしかったです。
──周東選手の出番は試合終盤、大事な場面で回ってきます。どのような心構えで準備しているのでしょうか。
周東 試合に入り遅れないようには気を付けています。途中から入っていくわけですが、最初から出ているような感じでいかないといけないなと。
──スイッチをONにするタイミングは。
周東 勝手に入りますね。だいたい出番が来るのが7回、8回なので、それまでに気持ちも体も準備をして。試合が進むにつれて徐々に高めていって、名前が呼ばれたら完全にスイッチが入ります。

念願のビールかけに大はしゃぎ。

お酒を手に終始笑顔で、最後は酒樽シャワーも
理想を突き詰めて
今季は一軍で存分に持ち味を発揮するも、残した成績を決して良しとはしない。レギュラー獲りを目指す来季に向け、侍ジャパンにも選ばれた今オフは、自分を見つめ直し、理想を追い求める。 ──レギュラーシーズンについても振り返っていきたいと思います。開幕直前に支配下選手となって、その後の活躍は想像できましたか。
周東 あんなに早く一軍に上がれると思っていなかったです。ケガ人が多く出たことで、スタメンでも出させてもらった。主力選手が戻ってきた後も、控えとしてベンチにいさせてもらって。この立ち位置は想像していなかったです。
──充実したシーズンだったと。
周東 上出来だと思いたいですけど、試合に出させてもらうことで自分のできないことがすごく多く見つかりました。できたことより、できないことが見つかったことのほうが収穫かなと思いますね。一軍は1年目ですから。
──具体的には。
周東 まずはバッティング。あとは、あまり目立たないですけど、外野守備のミスも自分としては多かったと思いますね。飛んでくる打球が自分のイメージと合わないことが多くて。目測を誤ると、外野の場合、大量失点につながることもあります。そこのズレはきちんと修正したいです。あと、僕は内野手の登録なのに、ほとんど内野を守っていない(苦笑)。もっと内野の守備をしっかり練習しないといけないなと思います。
──やはり内野も外野も両方できるようになりたいですか。
周東 もちろんです。マキさん(
牧原大成)とか本当にすごいなと思います。内野もうまいですし、なおかつ外野もできて。近くに目指すべきお手本の先輩がいるのは大きいですね。
──打撃面は、試合前の練習の合間に、チーム戦略室・データ分析担当の関本塁さん
(→「野球界の裏方仕事人」にて紹介)とよく話している場面も見かけます。今はどのような課題に取り組んでいるのでしょうか。
周東 実は最近、自分が将来的にどんなバッターになりたいかというビジョンが見えなくなってしまっていて。ハセさん(
長谷川勇也)とかにも「そんなにバッティングは悪くない」と言ってもらうんですが、本当に自信がなさ過ぎて……。何で打てないんだろうと悩むことが多いです。僕の場合、打席が少ない中で結果を残さなければいけない立場。方向性を決めたいんですけど……。
──理想とする選手はいますか。
周東 なれるなら、グラシアルになりたいです。ただ、パワーアップするためには筋肉をつけないといけない。そうすると、逆に走塁のほうに悪影響が出る可能性も……。難しいですね。今回、日本代表に選んでもらったので、いろいろな方に、いろいろな話を聞いてみたいと思っています。各チームを代表する、タイプが違った選手の方々がたくさんいるので。
──今季、数字的に満足している部分はありますか。
周東 1つもないですね……。
──25盗塁はチームトップですが。
周東 でも5個、失敗しているので。それに、もっと走れる場面はあったと思います。終わってみれば確実に30個はいけたかなと思いますね。
──出場試合数は100超えです。
周東 そこは満足と言えるかもしれません。僕の場合、出やすいと言えば出やすいのですが。代走も、グラシアルに代わっての守備固めもありますし。でも、ここまで出られるとは思っていなかったので、満足は満足です。
──来年はレギュラーも目指していかなければいけませんよね。
周東 獲りにいきたい、いかなければいけないと思っています。今年、102試合のうち23試合はスタメンで出させてもらって、経験ができました。また、ベンチの時間が長かったことで、最初から出たいなという思いが強くなりました。
──そのために必要なのは……。
周東 バッティングです!
──レギュラーは内野と外野どちらでしょうか。
周東 そこも難しいですよね。外野だとより打撃が求められるし、内野だと守れなきゃいけない。内野では、まずは二塁をきっちり守れるようになりたいです。ドラフトで新しい選手も入ってきますし、ライバルたちに負けないように。
──周東選手には今年1年の経験値があります。
周東 後輩たちには、上には上がいるというところを見せたいと思います。
──来年に向けて数字的な目標があれば教えてください。
周東 仮に来年も今と同じポジションだったらと思うと、盗塁は30個できれば上出来だとも思いますが。でも今年、盗塁王を獲った金子(
金子侑司)さんが41個だったので、できることなら、それは超えたいです。

課題の打撃は、日本シリーズ中も休日返上で取り組むほど。来季に向けてきっかけをつかむ
PROFILE しゅうとう・うきょう●1996年2月10日生まれ。群馬県出身。右投左打。東農大二高、東農大北海道オホーツクを経て、2018年育成ドラフト2位でソフトバンクに入団。ルーキーイヤーからウエスタン・リーグ盗塁王などタイトルも獲得して評価を上げ、2年目の春季キャンプでA組(一軍)に抜てき。開幕直前に支配下登録をつかみ、その後もチャンスを逃すことなく、主力の離脱で苦しい状況のチームを勢いづかせた。主力復帰後も自慢の俊足を武器に、代走をはじめ、外野の守備固めとしても活躍。支配下1年目から102試合に出場し、チームトップの25盗塁をマークした