各球団の主力選手の移り変わりと同様に、10年の間で球界にもさまざまな変化が起こっている。ここでは数多ある変化の中から、“9”のトピックスに注目。たかが10年、されど10年。その歴史の流れを感じてほしい。 【その1】躍進を果たした球団1 広島東洋カープの場合

2018年9月26日には、リーグ3連覇を地元で決め、マツダ広島では初めての胴上げを実現。緒方孝市監督以下ナインは、広島のファンの声援に応えながら場内を一周した
赤い花、咲き誇る 内外の要因が見事に合致。連続Bクラスから3連覇へ 昨季こそBクラスに沈んだが、16年から18年にかけては球団史上初のリーグ3連覇。しかもすべてが独走での優勝だった。人気も爆発、「カープ女子」なる言葉も生まれ、スタンドはホームではもちろん、ビジターでも、詰め掛けるファンで赤く染まる。広島は2010年代後半、セ・リーグを席巻し、栄華を極めたチームと言って差し支えないだろう。
しかし、2010年代の前半を振り返れば、その時点でのちの大躍進を予想できた人はほとんどいなかったはずだ。1998年から始まった連続Bクラスを年々更新、
前田健太の孤軍奮闘のみが目立つというチームだったのだから。
だが、今振り返ってみると、やはり、のちに赤い花が咲き誇るには理由があったことが分かる。そこには、種を蒔(ま)いた人、育てた人、咲かせた人がちゃんといるのだ。
3連覇の種が蒔かれたのは、連続Bクラスを続けていた10年に就任した
野村謙二郎監督時代だ。野村監督は、まず、前任のブラウン監督時代から方針を転換し、カープ伝統の厳しい練習を復活させた。そして、野手の軸となる選手として、
丸佳浩(現
巨人)と
菊池涼介を中心としたチームづくりを計画する。コーチには、広島には珍しい外様の
新井宏昌を招へいしたり、カープOBではあるが、他チームで勝つ味を知る
石井琢朗を就任させたりと、改革を図っていった。徐々に力を蓄えたチームは、連続Bクラスに15年でピリオドを打ち、13年、14年とクライマックスシリーズ(CS)出場を果たす。
上昇気流に乗ったチームは、新しいファンを引きつけ、人気を急上昇させていく。このころから、赤いグッズを身に着け、応援に通う女性ファンが急増。「カープ女子」という言葉が“新語・流行語大賞”にノミネートされたのは14年のことだ。ファンの後押しが強力になったことも、のちの黄金時代の到来と無関係ではない。
ただこの時点で、Aクラスに手が届くようになったチームが優勝を手にするには、もう一段、何か精神的な強さのようなものが育つことが必要だった。そして・・・
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