2017年春以来のV奪還を目指す22年春、セントポールの主将を務める。東京六大学で現役最多の62安打。大卒でのプロ入りに、強い思いがある。 取材・文=上原伸一 写真=田中慎一郎 
3年間、汗を流した埼玉県新座市内の立大グラウンド。最終学年は主将として、背番号10を着けチームをけん引する
プロ1年目からの逆算
ピンストライプのユニフォームが映える、スラリとした体。端正なマスクは、神宮でも女性ファンが多いことで知られる。
山田健太はプレーもスマートだ。「カッコいい選手でありたいと思っています」。グラウンドの外ではファッションにもこだわる。ただし、鍛え抜かれた体では、細身のデザインはなかなか難しい。「足も太いので、服はどうしても、ゆったりしたものになりますね」と笑う。これも成長の証し。183センチ、87キロ。大学で5キロ増えた。
冬場は肉体改造に取り組んでいる。「4キロ増やして、そこからシーズンに向けて絞っていくつもりです」。ウエートで重点的に鍛えるのは下半身。食事の回数も1日に4回か5回と増やし、プロテインも摂取している。ウエートアップに着手したのは、理由がある。神宮デビューした1年春は、リーグ4位の打率.375をマーク。以後も安打を積み重ね、3年秋までに現役最多の通算62安打。ベストナインも1年秋は一塁手、2年秋は二塁手で受賞も満足していない。
「圧倒的な数字を残しているわけでもないので……。昨秋は打率3割を打てませんでした(.270)し、通算本塁打でも、現役選手でトップ(10本塁打)である早大・蛭間(
蛭間拓哉)に、3本差をつけられてますしね」
見据えているのは、プロでの姿だ。「東京六大学で結果を残さなければ、プロ1年目から活躍できない」と考えている。指標になっているのが、
根尾昂(現
中日)と
藤原恭大(現
ロッテ)。ともに大阪桐蔭高で同期だった。根尾はドラフトで4球団から、藤原は3球団から1位指名を受け、高卒でプロの世界に飛び込んだ。「2人の動向は、常にチェックしてます」。
根尾は昨季一軍で30安打、藤原は47安打を記録し、高卒入団4年目の今季はさらなる飛躍が期待されている。来年、この2人と同じプロの土俵に立つのであれば、大学球界で突出した存在にならなければならない。

大阪桐蔭高では中日・根尾昂[前。後ろが山田]と二遊間を組んだ。同じステージでプレーしたい思いが強い[写真=石井愛子]
激しい二塁手のライバル争い
今春から東京六大学のキャプテンナンバーである「10」を背負う。主将は中学生以来。「言葉で引っ張っていくタイプではない」と話す山田は、自らの姿勢でけん引するタイプ。溝口智成監督からは「今年は山田のチーム。山田の色を出してほしい」と求められている。大阪桐蔭高時代、2年春のセンバツを制すと、3年時は二塁手として、甲子園春夏連覇に貢献。立大では勝利の喜びを味わっていない。17年春以来、リーグ優勝から遠ざかっており、中心打者としての責任を感じている。「春も秋もあの場面で僕が打っていたら……という試合があった。今年は狙ったボールは確実に仕留めたい」。自らのバットでリーグV奪還、そして全日本大学選手権制覇へと導くつもりだ。
今年は山田をはじめ、大阪桐蔭高で主将を務めた早大・
中川卓也、法大・
齊藤大輝、明大・
村松開人と、二塁手の主将が4人いる。いずれもドラフト候補に挙がり、意識しないはずはない。「慶應には
廣瀬隆太(3年)もいますし。二塁に各校の主力打者が集まりましたが、しのぎを削るのが楽しみです」。高校2年秋から守っている二塁手にも愛着がある。「投手と打者の対決が見やすいので、参考になりますし、プレー機会が多いので、リズム良く打席に入れる」。目指すは大阪桐蔭高の先輩である
楽天・
浅村栄斗。「浅村さんのような強打の大型二塁手になりたい」。中大出身で2学年上の
DeNA・
牧秀悟の活躍も刺激になっている。ルーキー年の昨季は「新人特別賞」を受賞し「同じ右打者ですし、1年冬の大学日本代表候補合宿でプレーを間近で見ているので、励みになります」。
高校の同級生や、先輩が待つプロの世界へ挑戦する2022年。過去に33人、残り38本に迫る通算100安打もモチベーションの一つ。神宮で攻守にわたって躍動し、高校卒業時から4年後の目標としてきた「ドラフト1位」で同じステージに立つ。
野球用具のこだわり
バットでこだわっているのはグリップの形状だ。「大学に入って木製になってから、タイカッブ型にしました。フレアになっていると握りやすく、しっくりくるんです」。重さは880グラム。素材はメープルでミドルバランスのモデルを使用している。「練習でも、折ることはほとんどありません」。抜群のミート力を証明する。手袋は赤。山田のラッキーカラーだという。
どちらかと言うと打撃のイメージが強いが、二塁を守るグラブにも愛着をもっている。「アウト、セーフが間一髪な打球が飛んでくることが多いですし、ゲッツーなどコンマ何秒かを争うプレーが多いので、捕球から握り替えがスムーズにいくように十字型のクロスウエブにしてます」と職人気質の一面を見せてくれた。
PROFILE やまだ・けんた●2000年7月19日生まれ。愛知県出身。183cm87kg。右投右打。千代田小2年時から東築ライオンズで野球を始め、千代田中では東海ボーイズで2年時に全国大会優勝。3年時には世界少年野球大会の日本代表(中日本選抜)で優勝。大阪桐蔭高では2年春(優勝)、2年夏(3回戦)、3年春(優勝)、3年夏(優勝)と4季連続甲子園出場。立大では1年春から出場し、同秋(一塁手)、2年秋(二塁手)でベストナイン受賞。東京六大学リーグ通算59試合、打率.301、7本塁打、26打点。