例年より早いタイミングで開幕を迎える2020年。春季キャンプも佳境に差し掛かり、各球団の“キャンプの焦点”も浮かび上がってきた。今回は5球団の現地直送レポートをお届けする。 取材・文=依田真衣子 写真=大泉謙也 
2ケタの背番号で躍動する長谷川
野手では競争も
12球団ワーストの防御率4.78、739失点で最下位に沈んだ昨季だったが、投手出身の高津臣吾監督を新指揮官として迎え、投手陣強化に臨んでいる。新たに加入した投手たちも、一軍戦力として自身の力をアピールした。 今季初の対外試合は、2月12日の韓国/サムスン戦(浦添)。キャンプ中の練習試合にしては珍しく、投手以外のスターティングオーダーはほぼ変わらず、守備位置の変更のみだった。この日、高津臣吾監督は、前日に亡くなった
野村克也氏の弔問のために帰京しており、不在。代わって指揮を執った
宮出隆自ヘッドコーチは、「人がいないので」と苦々しい表情を浮かべた。
それもそのはず。キャンプ第3クールを終えた時点で、野手陣はすでに“ヤ戦”病院と化している。
村上宗隆をはじめ、
奥村展征や
荒木貴裕ら、主力組が故障離脱した。村上はすでに二軍で調整に入っているが、万全の状態ではない。四番も期待される大砲のコンディション不良が及ぼす影響は、計り知れない。
誤算続きで苦難の船出となった高津スワローズ。だが、その中でも新戦力組がチームの光明となりそうな活躍を見せている。
宮出ヘッドはサムスン戦後、「サインどおりにしっかり動けるか。高津監督も、そういう野球を目指している」と話した。ここにマッチするのが、
楽天から加入した
嶋基宏だろう。高津監督は、経験豊富な捕手に対し「細かいこともできる」と太鼓判を押している。嶋にとっては新天地でのリスタートとなり、投手陣とのすり合わせ事項は多いが、心配は無用。ブルペンでも積極的にボールを受け、言葉を交わしながら、すっかりチームに溶け込んでいる。

梅野と嶋がブルペンで会話。経験豊富な捕手の声に、学ぶことは多い
内野手では、メジャー通算1367安打の内野手・エスコバーが正遊撃手候補に挙がる。巧打と堅守が武器で、「つなぎの四番」との声も。だが、昨年のレギュラー組も、そうやすやすと定位置を譲る気はない。奥村の離脱を好機としたい
西浦直亨や
廣岡大志は、必死の形相でボールを追っている。
正捕手の
中村悠平も同様で、レギュラー争いはまさに“サバイバル”の様相を呈している。
元育成左腕がアピール
昨季は12球団ワーストの防御率4.78、739失点。当然、課題は投手陣の再建となる。投手出身の高津監督や、
齋藤隆投手コーチを招へいするなど、チームとして問題解決に乗り出している。
そんな投手陣も、新加入組がカギとなりそうだ。12日のサムスン戦に3番手で登板した、昨季まで
ソフトバンクの育成選手だった
長谷川宙輝が、その一人。2ケタの背番号を着けてキャンプに臨むのは初めてだが、「こんな早くに実戦で投げさせてもらえた」と、今季初の対外試合で登板機会を得たことに、首脳陣の期待の高さを感じたようだ。21歳の若き左腕は、応えるように熱の入ったピッチングを披露した。この日の最速149キロ。直球を軸に、チェンジアップ、スライダーなどの変化球を投じ、2回を投げて4奪三振無失点。早速アピールに成功している。宮出ヘッドは「素晴らしかった。頼もしいボールを投げていました」と称賛の言葉を送った。長谷川は「支配下として獲ってもらったので、今季中に初勝利は達成しなければならないと思います」と、目標の最低ラインに「一軍で1勝」を掲げた。
もう一人は、この日5番手で登板した
今野龍太だ。昨オフに楽天を戦力外となった経験を持つ右腕も、長谷川と同じく2回を4奪三振無失点。宮出ヘッドは「今野はいつでも良いと思いますよ」とコメント。今野は15日、楽天との練習試合(金武)でも1回を無失点に抑え、宮出ヘッドの言葉どおりの好投を続けている。今野本人は「このままの投球を続けて、開幕一軍入りできれば」と意気込む。

今野は昨オフに楽天を戦力外となったが、リリーバーとして期待されている
さらに新外国人投手たちも、開幕に向けて準備を進めている。ともに最速153キロを誇る
イノーアと
クックの両右腕は、キャッチボールなどで念入りに体を動かしながら調整を重ねている。対外試合での登板はオープン戦が本格化してからになりそうだが、ブルペンでの投球を確認した高津監督は「ある程度は計算できます」と満足気な表情。すでに一軍戦力として考えている。
ルーキーも虎視眈々だ。ドラフト2位の
吉田大喜、同3位の
杉山晃基、同4位の
大西広樹の大卒右腕トリオが、キャンプ一軍スタート。即戦力として期待され、気合十分の3人は、連日居残り練習で汗を流している。ウオーミングアップは朝9時から始まるが、3人が球場を後にするのは18時過ぎごろ。休日返上で練習した吉田喜は「疲れは溜まってきています」と疲労の色を見せるが、「これから実戦が始まってくるので、ストレートのキレなどをアピールしていきたい」と話し、杉山は「1年間一軍にいたい」と、早くもシーズン完走を目標に定めている。
新戦力の台頭で、競争の色合いが濃くなっている。それぞれが抱える危機感を、チーム力の底上げにつなげたい。

石井弘寿投手コーチ[中央]に指導を受ける大西[左]と杉山のルーキー2人
【解説者の視点】遠慮せずにアピールを
「
ヤクルトの投手陣を見ていると、新加入組にも十分チャンスはあるなと思います。でも、チャンスをつかめるかどうかは、やはり結果だけなんです。先発か中継ぎか、どこをやるのかというのは首脳陣が決めることですが、それも受け身ではよくない。『俺はここがやりたい!』というのは、これからオープン戦などで結果を出して、戦力になることをアピールしていかなければなりません。それは昨年からいた投手も、新加入した投手も同じこと。新加入組の投手たちはまだ入団したばかりで環境にも不慣れかもしれませんが、遠慮せずに自己主張し、首脳陣にアピールすればいいと思います」