中日加入3年目の2018年は最多安打と首位打者の2冠を獲得。今季もドラゴンズの四番に座り、CS出場を目指すチームに欠くことのできない得点源だ。そんな主砲が愛用する2つのバットを紹介しよう。「日本でも広めてほしい」と言う米・ビクタス社製の試合用バットと、何とも可愛らしいオレンジの少年用バット。いま、この2本のバットが手放せないのだと言う。 通訳=桂川昇[中日] 取材・文=坂本匠 写真=小倉元司、BBM ペナントレース開幕から2カ月、6月に入り、中日の主砲・
ビシエドの試合前トレーニングに、新たなドリル(メニュー)が追加された。ダッグアウトを出て、まず行うのがこのドリル。バックネットに設置された打撃スペースに立ち、リナレス巡回打撃コーチがセットしたボール(いわゆる置きティー)を、集球ネットに向かって1球1球丁寧に、動きを確かめるように弾き返していく……。こう書くと、何ら変哲のない練習に思えるが、このとき、ビシエドが手にしているバットが興味深い。上写真のオールドヒッコリーのオレンジバットがそれで、試合で使うもの(後述)よりも15センチは短いだろうか。185センチと大柄なビシエドが持つと、アンバランスさが際立つ。

ビクタスの試合用と並べると、そのサイズの違いがはっきり
「いつかは忘れたけど、このバットは京田(
京田陽太)が僕の息子に、とプレゼントしてくれたものなんだ。息子はまだ小学生で、名古屋で軟式のチームに入っているから、木製はまだ使わない。ロッカーに保管しておいたんだけど、6月の頭くらいに『ちょっと振ってみようかな』と思い立って、実際に打ってみたら感覚がすごく良くてね。それ以来、息子には悪いけど僕が使わせてもらっているよ(笑)」
小さいバットを扱うことで、バットを遠回りさせず、内側から絞り出すコンパクトなスイングが身につくのだという。
「僕がやっているドリルは、まず左手1本でティー打撃をして、次に右手1本で打つ。ここでコンパクトな腕の使い方を身につけて、普通のバットに持ち替えると調子がいい。アメリカにいたときは短いバットを使っていたんだけど、日本に来てやっていなくてね。自分のスイングをうまく調整できるようになったし、京田から、良いバットをもらったね(笑)」

練習の始まりは少年用バットでの片手ティー打撃から。「内側から」の意識づけが可能だと言う
4月の月間打率は.259と、らしくない成績だったが、次第に調子を上げ、6月は同.304、7月は17日時点で.350と絶好調。シーズン打率も.305とついに3割に乗せた。2年連続の首位打者も射程圏内にあり、「最終的に良い成績でシーズンを終えれたらベスト」と、控えめながらもまんざらではない。
「日本では使っている選手を見ないから、広めてよ」ともう1つ、披露してくれたのが、試合で使用するアメリカ・ビクタス社製のバットだ。2016年の来日時には日本のメーカーのものを使用していたが、最近は「持ってみたらフィーリングが抜群だった」というビクタスを好む。34インチ(約86センチ)、31.5オンス(約890グラム)のメープルは、「打感がいいし弾きも良い。ストレスが一切ない」と現在のハイパフォーマンスを支えている。

試合用にはテーピングを巻き、グリップ力を高めている
「自分はヘッドが太いほうが好き。パッと見たときに、芯が広く感じるから。グリップをテープで巻くのは、握りやすいのもあるし、グリップが太いほうが振りやすい。そういえば、日本人の選手はヘッドが重いバットが好きだよね? 僕には重たくて、ちょっと合わない。だから僕はバットのヘッドをくり抜いている。カップは深いのもあるし、浅いのもあるんだけど、それは体調に応じてかな」

ビクタスの試合用は、ヘッドが大きめかつ軽め[ヘッド部分をくりぬいている]が好み
来日4年目。環境にも慣れ、「最高」というバットも手にした。まさに鬼に金棒。「後半戦も良い成績を残せるように、全試合勝つつもりで頑張ります」と頼もしい。
PROFILE ダヤン・ビシエド●1989年3月10日生まれ。185cm108kg。右投右打。内野手。キューバ共和国出身/エスクエラ・デポルテ・エスパ高―ホワイトソックス09―中日16=4年