
雪辱を誓う
誰よりも悔しい思いをしたのは、本人に違いない。4年契約の3年目となる昨季。
岸孝之は15試合に登板し3勝5敗、防御率3.56という成績に終わった。
西武から移籍後、初めて開幕投手を務めた。しかし、その試合中に左太もも裏を痛めて緊急降板。5月に復帰を果たすも、7月にはへんとう炎で再び戦線を離脱した。シーズンで1試合も完投できなかったのは、プロ13年目で初めてだった。「ケガから始まって、復帰して投げても勝てず。また復帰して投げても勝てず。本当に申し訳ないシーズンだった」
巻き返しを狙った今季。1月の合同自主トレでは藤平らと精力的に汗を流し、万全の状態でキャンプインした。沖縄・久米島キャンプでも意欲的な調整を続けてきたが3月18日、腰の張りを訴えて離脱に追い込まれた。
コロナ禍で、当時から開幕の見通しは立っていなかった。「また一から作り直すことになるかもしれないので、そんなにあわてずにというか。しっかり治す方向で対処することになりました」。伊藤投手チーフコーチは治療を最優先させる方針を示した。
ただ、状態は思ったほど悪くないようだ。ブルペン投球などで慎重に調整を進めた右腕は、離脱から10日後の28日、泉の二軍練習場で離脱後初めて打撃投手を務めた。堀内と石原へ約40球。初球からどんどん直球を投げ込み、両打者が差し込まれる場面もあった。
離脱前には「とにかくチームの優勝に貢献できるように」と語っていたエース。人一倍、責任感の強い男は、その目標の実現に向けて一歩一歩、着実に前進していく。
写真=BBM