
東京五輪でも扇の要として頂点を目指す甲斐
今やチームの誰かとレギュラーを争うことも、リードが苦しくなってスタメンマスクを譲ることもない。「ピッチャーを助けるのが捕手の役目ですから」。黒子のスタンスを崩さない
甲斐拓也だが、パ・リーグを代表する捕手として、押しも押されもせぬ地位を確立したと言っていい。オールスターゲームの選出こそ
西武・
森友哉にファン投票、選手間投票ともトップを譲ったが、完全に一騎打ち。監督選抜での出場に異論を唱える者はいまい。
時折ある若手の出場機会は経験を積ませる意味合いで、甲斐がほとんど1人でホームプレートを守っている。キャノンと称される盗塁阻止能力は健在ながら、阻止自体よりも、走者にスタートを思いとどまらせる“抑止”の効果が大きい。さらに頼りにされているのは強固な“壁”としての力。12球団で1、2を争うチームの暴投数の少なさが示すように、ブロッキング能力は球界屈指だ。
長らく課題だった打撃も進境著しい。故障者続出で打線が得点力を欠く中、交流戦直前には
工藤公康監督の発案から二番に入ったこともあった。指揮官が「本人からのアピールもありました」と明かしているように、本人がその気だ。
今夏は日の丸を背負い、金メダルへの戦いに挑む。2017年の
稲葉篤紀監督就任以降、すべての大会、試合で代表招集されてきた。
會澤翼(
広島)の故障辞退もあり、主戦捕手となりそうだ。「重圧もあるし、不安もゼロではないけど、強い責任感を持って戦う」。育成6位入団。誰もがふと彼のルーツを忘れてしまうほど、頼もしい存在になった。
写真=BBM