
中継ぎ、抑えでフル回転した
信頼の証しだった。10月13日の
ソフトバンク戦(
楽天生命パーク)。1対1の緊迫した場面でマウンドに上がったのは、
宋家豪だった。9回、先頭の
柳田悠岐に四球を与えたものの、後続はピシャリと抑えた。すると直後の攻撃で味方打線が1点を奪って今季初のサヨナラ勝ち。右腕が、今季3勝目を挙げた。
8月下旬、守護神の
松井裕樹が故障で離脱。守護神が抜けた穴を埋めようと、投手陣は全員が懸命に腕を振った。中継ぎ陣では西口、酒居、安楽……。誰が欠けてもAクラス入りは果たせなかっただろう。その中からたった1人だけ「陰のMVP」を選定するなら、自己最多となる63試合に登板し3勝3敗24ホールド7セーブ、防御率2.23の成績を残した宋家豪を推したい。
昨季は38試合に登板し1勝2敗10ホールド、防御率6.94。制球が定まらず、甘くなったところを痛打される場面が目立った。シーズンで計7発も被弾した反省もあったのだろう。今季はキャンプから意欲的に走り込んでいた。強化した下半身を生かし、150キロ超のツーシームを低めに集めて凡打の山を築いた。
救援に失敗した試合もあったが、石井GM兼任監督は責めなかった。「よくチームのために働いてもらっている」とプロ初を含む7セーブをマークした右腕をねぎらった。
故郷の台湾は新型コロナ禍に加え、ワクチン不足に悩んだ時期もあった。「台湾も大変な時期があった。自分のいい投球で、勇気を届けたいと思った」と宋。その活躍は、母国のファンにもきっと届いたはずだ。
写真=BBM