一死三塁です。打者は左中間への大きなフライを打ち上げました。三塁走者は左翼手が追いつきグラブに入ったのを見てタッチアップし、本塁へ向かってスタートしましたが、ボールは左翼手のグラブから転がり出ました。しかし、ボールが地面に落ちるより前にそばに寄ってきていた中堅手がグラブに入れています。その後、中堅手はボールを三塁手に送球し、「完全に捕球するよりスタートの早かった三塁走者はアウトだ」とアピールしてきました。これは認められるでしょうか。 アピールは認められず、得点となります。捕球を定義している規則2.15[原注]に以下のようにあり、質問に該当するシチュエーションは太字で強調されています。
「野手がボールを地面に触れる前に捕らえれば、正規の捕球となる。その間、ジャッグルしたり、あるいは他の野手に触れることがあってもさしつかえない。走者は、最初の野手が飛球に触れた瞬間から、塁を離れてさしつかえない」 もし、第二の野手が完全に捕球するまでスタートできないのなら、タッチアップを阻止する手段が考えられます。守備側は飛球に対して、わざと完全捕球することなく、ボールをグラブから弾ませて、そばの野手にトスするなどして、それを繰り返しながら前進すれば、三塁走者はスタートを切れなくなります。
落球したボールを、そばの野手が地面に落ちる前につかむプレーは、めったに見られません。忘れられないのは1971年6月3日の
ロッテ対近鉄(東京球場)でのことです。5対4と1点リードされた10回裏に二死一、二塁でロッテはロペスが右中間へ大飛球を打ちました。近鉄の
山田勝国中堅手が捕球したと見えた次の瞬間、フェンスにぶつかったのではじいてしまいました。しかし、ボールは幸運にもカバーに走ってきた
永淵洋三右翼手の前に飛んできたのでキャッチ。スリーアウトが成立したために、近鉄はサヨナラ負けを免れました。