大学通算2勝。3年間6シーズンで34イニングしか投げていない右腕が注目を浴びている。
昨秋に150キロの大台を突破。
昨年まで4年間、横浜商大を背負ってきた阪神・岩貞と楽天・西宮の後釜を担う「未完の大器」に今春の命運が託されている。 取材・文=岡本朋祐
写真=大賀章好

▲昨秋まで岩貞が着けていたエース番号「18」を引き継ぐ進藤。その表情からは、自覚がみなぎっている
周囲の喧騒をよそに冷静な自己分析 目標は「日本一」。神奈川大学野球連盟に所属する横浜商大は過去に4度大学選手権に出場しているが、全国1勝を果たせていない。昨秋までは
岩貞祐太(阪神1位)、
西宮悠介(楽天5位)と2人のドラフト指名選手を抱えながら、在籍8シーズンでリーグ優勝1回(2011年春)。桐蔭横浜大、関東学院大、神奈川大を含めた4強を形成する群雄割拠の戦国時代にあって、神宮へのハードルは高く険しい。
だが、
進藤拓也は新年の抱負として、自らへの危機感も込めて冒頭の三文字を掲げた。プロ入りした左腕コンビを軸にリーグ戦を回していたため、3年秋まで通算2勝。13試合で34イニングと目立った実績のない右腕であるが、NPB12球団がリストアップする逸材だ。昨秋のリーグ戦(神奈川大2回戦)で、横浜スタジアムの電光掲示板に表示されたのは「150キロ」。自己最速を3キロ更新する“未完の大器”の評判は、すぐさまスカウト戦線における話題の中心に浮上。1月4日の練習始動日には、7球団のスカウトが視察に訪れた。だが、浮かれる様子はなく、むしろ冷静に現実を受け止めている。
「最終的にプロへ行きたい気持ちはありますが、現状の力で考えると厳しいと思うんです。社会人へ行っていろいろな方と出会って、足りない部分を補ってからでも遅くはない。まずはこの春、リーグ戦で試合をつくれる投手を目指していきます」
◎
秋田県南東部の大仙市出身。山と川に囲まれた大自然の中で育った。
「コンビニも家から車で20分です(苦笑)。周りには遊ぶ所が何もないので、中学時代は夏場の練習が終わると川へ泳ぎに行ったり、イワナやヤマメを釣っていました」
協和中時代は一塁手がメーンで控え投手。高校は秋田で上位レベルに位置する、大仙市内の大曲工高の選択肢もあった。だが、投手としての登板機会を求めるため、自宅から最も近い西仙北高へ進学する。至近距離といえども「車で5分も、自転車で30分」(進藤)と、丘の上にある同校までの毎朝の通学が、下半身強化トレーニングとなっていた。
高校時時代の進藤を一言で説明するなら・・・
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