
相手攻撃中にキャッチボールをするヤクルトの由規選手。今季はこんな姿は見られなくなる?
申告敬遠制の採用や、反則投球に関連する項目の削除などに注目が集まりがちですが、1月11日に行われたプロ、アマ合同野球規則委員会ではもう1つ、気になる提言がなされています。「ベンチ前のキャッチボールの禁止」についてです。
攻撃が終わりかかると、その攻撃側チームの投手がベンチ前に出て、控えの捕手(または野手)を相手に投球練習(キャッチボール)を始めるのが、日本では当たり前の風景になっていますが、実はこれ、野球規則違反なのです。
プレーヤーの交代について書かれた規則5.10(k) には「両チームのプレーヤー及び控えのプレーヤーは、実際に競技に携わっているか、競技に出る準備をしているか、あるいは一塁または三塁のベースコーチに出ている場合を除いて、そのチームのベンチに入っていなければならない(以下略)」とあります。ここでいう「競技に出る準備をしている」という選手は、実際に交代を通告された選手のことで、すでに出場している選手は「ベンチに入っていなければならない」のです。
今回は見逃されてきた(許されてきた)この規則を厳格に適用しようというもので、提言として規則5.10(k)の順守という形で議題に上がりました。その他の規則と同様に、プロ野球では今後、実行委員会や12球団監督会議などで再度話し合われます。
MLBでは規則が順守されており、
ダルビッシュ有選手がレンジャーズに移籍したばかりのころ、「日本のようにチェンジの前にベンチの前で練習できないので、初めは戸惑いました」と話していたこともありました。WBCでは試合中、ベンチ前でキャッチボールを始めた日本バッテリーが、ベンチに戻るように注意を受けたこともあります。
第3回WBCが行なわれたあとの2013年にも「ベンチ前のキャッチボールの禁止」について、規則委で議題に上りましたが、プロ野球選手会の反対などもあり、厳格な適用が見送られていました。しかし、二段モーションについても、「国際基準に合わせるため」を理由にしていますから、厳格化は避けられないかもしれません。
ウォーミングアップによるケガ防止などで選手は必要性を訴えています。MLBからやってきた外国人選手も、日本では許されている(規則上は禁止ですが)と知れば、当たり前にベンチ前に出てキャッチボールをするわけですから、その効果もうかがえます。最終決定ではないので、引き続き注目したい問題です。
文=坂本 匠 写真=BBM