遅刻は大物の証拠？

　う～ん、阪神の藤浪晋太郎が遅刻で二軍落ちか。
　新型コロナの感染といい、今回といい、何だかここ数年のピッチング同様、間が悪い選手になってしまったな。
　球界では、遅刻といえば罰金が定番だが、まさか二軍落ちとはね。
　チームの和を大事にする矢野燿大監督らしい決断と言えるのかもしれない。
　それじゃなくても、感染でチームのスケジュールを狂わせ、迷惑をかけたのは事実だしね。

　野球界だけじゃなく、一般社会もそうだと思うが、５分前ルールというのがある。
　予定の時間の５分前には来ている、というね。
　俺は社会人のデュプロ時代から、それが体にしみ込んでいたから遅刻はなかった。いや、１回しか……。

　あれは94年オフ、巨人に移籍し、東京ドームに初めて行く日だった。
　広島からヨメさんの実家に引っ越し、そこから初めて向かう東京ドームだった。
　俺にしては珍しく少し緊張し、車でかなり早く出たんだが、途中でまさかの事故渋滞。
　焦った。知ってる道なら高速を降りて、裏道とかも考えるが、分からない。ナビもない時代だしね。
　大遅刻になって、あとでマネジャーに冷たく、「川口君、罰金だからね」と言われた。

　だから実は、俺は藤浪に強く言えない。何か事情があったなら１回くらい、とも思わないではない。
　まあ、１回だけじゃなかったのか、あるいは矢野監督の愛の鞭かもしれないけどね。

　ただ、藤浪（これを読んでるかどうか知らんが）、悪い例を教えるわけじゃないが、俺の現役時代、５分前どころか30分前ルールが12球団で一番徹底していた巨人で自由にふるまう男がいた。
　松井秀喜だ。聞けば、若手時代からそうで、先輩からかなりきつく怒られても変わらなかったという。
　オールスターに遅刻したことも何度かあったし、メジャーでもあったらしいね。

　松井の場合、ルーティンを気にする選手だったから、時間にルーズというより、「これをしなきゃ行かない」というこだわりが強くあったのかもしれない。
　いずれにせよ、松井の良さは遅刻しても、というか、遅刻したときほど試合でいい結果を出したこと。だから、周りも徐々に許すようになった。

　藤浪が今、どんなメンタルでいるのか分からないけど、もし、落ち込んで悩んでいるならアドバイスしよう。
　少し力を抜こう。もう、優等生はやめていいよ。
　遅刻？　すいません。でも、試合になればしっかり結果を出すんで大丈夫です、って笑顔で言えたら、違う景色が見えるかもしれないよ。

　ただ、もし、「何で俺が二軍落ちなんだ。ふざけるな」と思っているなら、別だ。
　頭を冷やせ、プロはそんな甘いところじゃないよ。