34年組の常識人・平田
最初に断っておくが、このタイトルは編集部が考えたもので、別に俺がクイズを出しているわけではない。
だから答えから書こう。今回は阪神の二軍監督、平田勝男の話だ。
平田は昭和34年生まれだが、球界の34年組はあまりいない。しかも変わり者が多いと言われることが多い。でも、俺は違うと思っている。
だって、俺の生まれた年だよ。たぶん、
小松辰雄(元
中日)あたりの印象が強いのかもしれないね(笑)。いや、確かに俺も変わっていると言われることはあるけど、仕方ないでしょ。サウスポーのピッチャーは個性がなきゃ生き残れないしね。
で、誰が見ても常識人の34年組が平田なんだ。
明治から阪神とエリートコースを歩み、1985年の日本一イヤーは堅守のショートとして活躍し、還暦を越えた今もユニフォームを着ている。
すごく気遣いのできる男で、俺が取材で行くと「おお、よく来たね」と、いつもあの笑顔で歓迎してくれる。
決して派手な選手ではなかったが、指導者となってからも最前列じゃなく、その少し後ろでサポートしてきた。
その平田が今、にわかに脚光を浴び始めている。
連勝記録だ。阪神の二軍がファーム記録の18連勝でしょ。すごいよね。二軍監督の難しさと言われる、選手の育成・再生と勝利をしっかり両立している。
俺が気になっているのは、連勝じゃなく、「平田再生工場」のほうだ。
昨年1年、ファームでもまれた左腕の
及川雅貴がリリーフのキーマンになっているが、あれは育成力だよね。それもすごいと思うけど、阪神は、二軍と一軍を行き来している選手が多い。うまく入れ替えができている。
入れ替えが多いのは、定着する絶対的な力がないというより、二軍監督経験のある
矢野燿大監督がうまく二軍を使い、選手を調整させ、いい状態にして一軍で使っているのかなと感じる。
たぶん選手も、二軍落ちを片道切符とは思ってないんじゃないかな。
そして、その根底にあるのが矢野監督の平田監督への信頼だと思うよ。
しっかりいい状態にして戻してくれるはず、というね。
以前、平田に聞いたときは、特別なことをしているわけじゃなく、当たり前のことを当たり前にさせているだけ、と言っていた。
ファウルを追いにいかなかった内野手にカミナリを落とした話をしていたが、その選手はスタンドに入るという判断し、スタートを切らなかったらしい。平田監督は、スタートに関しては条件反射で切り、可能性あるならぎりぎりまで追ってほしいと言っていた。
笑顔のイメージが強いが、怒ると怖いらしいね。いつも厳しいとか、いつも楽しいだけでなく、そういう多面性も若い選手の指導には大事なのかもしれない。
二軍はプロ野球選手の原点、お金を稼ぐ場所じゃなく、学びの場だからね。平田というふところが深いアイデアマンは、まさに適任だと思うよ。
先日は、
佐藤輝明が二軍に落ちたが、うまく使いながら再生させ、一軍に戻してくれるんじゃないかな。
でも、二軍というのは、ほんといろいろな選手がいる。育成中の選手、不振で調整中の選手、故障の選手などね。
平田は、彼らをすべてを平たくし、勝つ男にしてくれるんじゃないかな。……というオチだったんだけど、どうですか? 滑りました?
写真=BBM