打ち勝つ野球から守り勝つ野球へ

今季、先発に転向する平良
松井稼頭央新監督が就任した
西武だが、今季は厳しい戦いが予想される。
スポーツ紙デスクは、「正捕手の
森友哉が2022年オフにFAで
オリックスに移籍し、チームを長年支えてきた
中村剛也、
栗山巧も今年で40歳を迎える。レギュラーでシーズンを通じて出場するのは厳しい。現状でレギュラーが決まっているのは
山川穂高、
源田壮亮、
外崎修汰の3人のみ。野手陣を見ると、
ソフトバンク、オリックスに戦力で見劣りする。優勝争いに絡めるかは投手陣がどれだけ頑張れるかに尽きます」と分析する。
辻発彦監督が率いた18、19年にリーグ連覇した際は投手陣が4、5点を奪われても、6点を奪う「山賊打線」がチームの看板だった。18年のチーム総得点はリーグ断トツトップの792点。オーダーを見ると、一番・
秋山翔吾(現
広島)、二番・源田、三番・
浅村栄斗(現
楽天)、四番・山川、五番・森、六番・外崎、七番・栗山、八番・中村、九番・
金子侑司と長打力、機動力、出塁率を兼ね備えた強力打線だった。八番の中村が28本塁打をマークし、本塁打王を獲得した実績がある
エルネスト・メヒア、正捕手として活躍した
炭谷銀仁朗(現楽天)も控えていた。チーム防御率4.24、653失点はいずれもリーグワーストだったが、打ち勝つ野球で頂点に立った。
リーグ1位のチーム防御率
だが、秋山、浅村らがFA移籍し、ブレークする若手の野手がなかなか現れなかったことで打線がスケールダウンしていった。昨季はリーグ5位の464得点。それでも、前年の最下位からCS圏内の3位に浮上した要因は、投手陣の踏ん張りだった。チーム防御率2.75はリーグトップ。
高橋光成、與座海斗、
エンスの3人が2ケタ勝利をマークし、
松本航、
今井達也もエース候補として能力が高い。救援陣は
平良海馬、
水上由伸、
森脇亮介、
本田圭佑が抜群の安定感を誇り、守護神・
増田達至につないで逃げ切る野球を確立した。
その投手陣に、今年は大きなテコ入れが敢行される。先発転向を熱望していたセットアッパー・平良が球団側と話し合った末に理解を得られ、今年は先発で勝負する。昨季はリーグ最多の61試合登板で1勝3敗9セーブ、34ホールド、防御率1.56で最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得。3月のWBCで侍ジャパンにリリーバーで選出されることが有力視されていたが、先発転向で出場しない意向を明言したことからも本気度がうかがえる。
2ケタ勝利はノルマ
救援で実績を残した投手が先発転向し、成功するとは限らない。1ニングを抑えきる役割の救援は球威で押し込めるが、先発で長いイニングを投げるためには変化球の種類、精度、球数がかさまないための制球力の良さ、先発ローテーションで1年間投げられるスタミナが必要となってくる。
西武を取材するスポーツ紙遊軍記者は、「平良は先発でも十分に通用する」と太鼓判を押す。
「常時150キロ中盤を計測する直球でねじ伏せるイメージが強いかもしれませんが、スライダー、フォーク、カットボールと変化球の質も高い。以前使っていたツーシーム、カーブも再び投げ始めていますし、投球の幅が広い。同じく救援から先発転向して球界を代表するエースになった
山本由伸(オリックス)のように進化する可能性が十分にある」
平良の活躍は、西武の命運を握っていると言っても過言ではない。2ケタ勝利はノルマ、リーグトップクラスのイニング数を投げて15勝に近づきたい。仮に先発で機能しないようだと、「セットアッパー・平良」を失った上での誤算なので大きな戦力ダウンになる。希望していた先発で輝きを放ち、稼頭央ライオンズの救世主になれるか――。
写真=BBM