帰ってきた頼もしい主砲

復帰戦となった9月15日の中日戦で2本塁打を放った中田翔
逆転でCS進出を目指す4位・
巨人に、頼もしい主砲が帰ってきた。9月1日に体調不良のため「特例2023」で登録抹消された中田翔が15日の中日戦(バンテリン)に「七番・一塁」で出場。2回に先制の左犠飛を放つと、4回に
岡本和真、
坂本勇人に続き8月9日の
阪神戦(東京ドーム)以来37日ぶりの14号ソロ。6回にも15号左越え2ランと止まらない。2本塁打4打点の大暴れで、チームの勝利に大きく貢献した。
今季のシーズン途中の大きな変革が、「不動の遊撃」として長年守り続けていた坂本の三塁コンバートだ。9月7日の
ヤクルト戦(神宮)からプロ17年目で初となる三塁を守り、対応能力の高さを見せている。三塁線の鋭い打球を巧みなグラブさばきで処理するなど不安を感じさせない。新たなポジションで守り慣れるために経験を積む必要があるが、十分にこなせるだろう。
攻守で技術が落ちているわけではないが、近年は故障が増えて離脱するケースが増えていた。坂本不在はチームにとって大きな戦力ダウンとなる。体に大きな負担が掛かる遊撃から三塁に回ることで、さらなる活躍が期待される。このコンバートを実現できたのは、ドラフト4位・
門脇誠の存在が大きい。俊足を生かした広い守備範囲で肩も強い。打撃も夏場以降は鋭い打球を放つようになり、打率を上げている。「坂本の後継者」としてメドが立ったことで、内野陣のシャッフルが実現可能になった。坂本のコンバートで、三塁を守っていた岡本和は一塁へ。本職は三塁だが、一塁、左翼も高水準の守備能力を見せているため不安はない。
昨年勝ち取った3年契約
三塁・坂本、遊撃・門脇、一塁・岡本和のラインアップで試合が続いていた中、レギュラー剥奪の危機を迎えたのが中田翔だった。昨年は序盤に打撃で試行錯誤を重ねていたが、ファームで大幅な打撃改造を断行したことで、状況が好転した。ギリギリまでバットのヘッドを返さず、バットを縦に入れる軌道でボールの内側を叩く打法に変化して確実性が高まった。逆方向にもヒットゾーンが広がり、持ち味の飛距離も落ちない。6月中旬に一軍昇格以降は好調をキープし、8月に入ると調子を落とした岡本和に代わって四番に。109試合出場で打率.269、24本塁打、68打点をマークし、その働きぶりを評価されて同年オフに3年契約を新たに結んだ。
主軸として期待された今季は開幕戦から2試合連続アーチを放つなど、4月終了時点で6本塁打をマーク。幸先良いスタートだったが、5月4日のヤクルト戦(東京ドーム)で走塁中に右足を痛めて途中交代し、右太もも裏の肉離れで戦線離脱した。3週間も経たず一軍にスピード復帰したが、その後もコンディションが万全でない状況が続き打撃も下降線に。8月以降はスタメンを外れて代打での出場機会が多くなり、9月1日に体調不良で登録抹消された。
CS進出へ起爆剤になれるか

CS進出へ中田翔のバットが必要なのは言うまでもない
他球団の首脳陣は、こう語る。
「コンディションが整えば、まだまだレギュラーで活躍できる選手でしょう。打撃改造をしてから追い込まれても粘るようになり、打ち取りにくい打者になった印象がある。もともと一発がある打者なので、粗さがなくなったら厄介ですよ。一塁の守備能力は球界トップクラスですし、一塁に中田を据えて、左翼で岡本を起用するというオプションもあるんじゃないですかね」
指摘のとおり中田翔を一塁、岡本和を左翼で同時に起用する「超攻撃型布陣」が15日の中日戦で実現し、中田翔は最高の結果を出した。3位・
DeNAも勝利したため2.5ゲーム差は変わらないが、DeNAと直接対決が4試合残っているため逆転でCS進出のチャンスは十分にある。負けられない試合が続く中、中田が打線の起爆剤になれるか。
写真=BBM