
常識にとらわれない水島作品の数々は、未来を予見するものが多かった
今こそ、“水島ワールド”にどっぷり浸かってみたい。
1983年のオールジャパンプロ野球、開幕戦。新宿メッツの本拠地、新宿スタジアムで発表されたスターティング・ラインアップの場内アナウンスを耳にした瞬間、ロッカールームにいた武蔵オリオールズの選手は仰天した。
「な、なんだと~~~もういっぺんぬかしてみい」
ひときわでっかい声でこう叫んだのは、オリオールズ一筋10年、四番、サードの玄蕃だ。
「なに」「DHなし!! だと」
「そんなばかな」
『九番、ピッチャー新田、背番号1』
DH制を採用しているワイルド・リーグのオリオールズは、メッツとの開幕戦の先発に19歳のルーキー、新田小次郎を起用した。日本海高校のエースとして甲子園を沸かせ、12球団すべてから1位入札を受けた超大物ルーキーは、エースの伊達を差し置いて開幕投手に抜擢された……からチームメートが驚いていたわけではない。DH制を採用しているリーグなのに、ピッチャーが九番に入ったから怒り狂っていたのである。
「開幕試合なのに日照をベンチにおくのか」
「日照よ、まあ、気にすんな」
「気にしますぜ。これをだまっているようじゃ、野球をやる資格はないというもんさ」
怒っていたのは・・・
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