5月に入ってからの快進撃は強力な中継ぎ陣によるものが大きいと言われているが、その前を投げる先発陣が役割を果たさない限り試合は成り立たない。今季の阪神は昨季までとは違う先発投手が頑張り、試合を作っている。 写真=太田裕史 鳴尾浜で下を向く背番号29は、失意の中にいた。「ケガをしたときに思ったんです。ああ、みんな野球できてるっていいな」。左肩のコンディション不良に左ヒジ痛……。
「あ、やっちゃったなって。投げた瞬間、ヒジからメシッて音がしたんです」。ひとり外野グラウンドで走るだけだった。
重圧とも戦っていた。「ここでマウンドを降りたら、次のチャンスがもらえないんじゃないかと焦って。もちろん、僕が悪いんですけど」。昨季のプロデビューは圧巻だった。初登板初先発となった昨季4月11日の
広島戦(甲子園)で7回無失点に抑えて勝ち星をゲット。ただ、昨季6月10日
ロッテ戦(甲子園)で敗戦投手になってから姿を消していた。
「投げられないってことが、こんなにつらいなんて初めて知りました。腕を上げるだけで、引っ掛かる感覚があって怖かったんです」
同じ失敗はしない。今季は焦ることなく、準備をしてきた。春季キャンプは二軍スタート。虎風荘の前寮長が退任する際、急いで自転車に乗って花束を買ってくるほど、優しい性格の持ち主だ。
今季は先発ローテーションの谷間で3試合に先発。5月30日の
巨人戦(甲子園)で7回2失点で今季初勝利。「マウンドで投げられるのは、やっぱり楽しいです」。光を探してはい上がり、暗闇を抜け出したことに意味がある。