侍にとっての魂が刀であれば、打者にとってのバットも同じ。彼らの“魂”であるバットにフォーカスした今回の特集。まずは、「トリプルスリー」を過去3度達成した男のこだわりを聞いた。プロ1年目の途中から変わっていないという、セ・リーグを代表する打者の“魂”とは――。 取材・構成=依田真衣子 写真=ヤクルト球団提供、桜井ひとし、榎本郁也 
その日の調子に合わせて、研ぎ澄まされた感覚で選び抜いた一本を使用する[写真=桜井ひとし]
“普通の”バット
2021年使用バット 
メーカーはアディダス。漢字で「山田哲人」と刻印されている。グリップエンドは山田がこだわったポイントだ[写真=ヤクルト球団]
■素材/ハードメープル
■長さ/85センチ
■重さ/890~910グラム
打率3割、30本塁打、30盗塁。この“トリプルスリー”を、史上唯一、3度も達成した男だ。その驚異的な成績をたたき出したバットは、ミドルバランスの「ごく普通」のバット。ただし、この形状はヤクルト伝統の一本でもあり、後輩であるチームメートの四番・村上宗隆らも使用しているという。 ──現在のバットを使用しているのは、いつからですか。
山田 プロ入り1年目の途中……後半くらいからですね。結構ヤクルトにいたんですよ、このバットを使っている人。
雄平さんもそうですし、青木(
青木宣親)さんも。先輩にお借りして使わせてもらったときにしっくりきたので、もうプロ11年目になりますけど、1年目の途中からずっと変えていません。
──不調に陥った際など、バットの形状やメーカーを変えたくなったことはありませんでしたか。
山田 確か、1回だけあった気がします。3年目くらいのときかな。でも、あちこち探して試した結果、結局このバットに戻ってくるんですよ。やっぱりこれが一番しっくりくる。なのでそれ以来、あまり変えないようにと思っています。
──あまり特徴がある形状には見えませんが……。
山田 そうですね。形は確かに、かなり平均的ですね。オーソドックスなバットだと思います。
──長打もアベレージもという、山田選手のバッティングスタイルに合っているのかもしれませんね。
山田 そうですね。あまり長打狙いのバットでもなく、本当に一般的な、“フッツー”のバットですね。特殊な形でもないですし。
──ほかに、山田選手と同モデルのバットを使っている方はいますか。
山田 村上(村上宗隆)もですね。ほかにも何人かいたと思います。
──“青木モデル”“雄平モデル”を参考にしたということですが、さらに元祖となっている人はいるのでしょうか。
山田 元祖は・・・
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