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イチローを語る。

イチローを語る。球界26人の証言【前編】

 

メジャー移籍19年目。NPBでの対戦経験者は現役では、ほとんどいなくなったが、少年時代からイチローにあこがれ、目標としてきた選手は数多い。今回は26人に「イチロー」を熱く語ってもらった。
写真=Getty Images、BBM


阪神・福留孝介 「ライバルという意識もあった」


福留孝介外野手・42歳[06、09年WBC日本代表でチームメート]


「同じ外野手として『目標』の存在ではありますが、追いつける選手ではないですね。僕は常にすべてにおいてイチローさんの感性を知りたいんですが、なかなかそこを知るのは難しい。WBC日本代表でチームメートとして一緒になったときに、いろいろな話をさせてもらいました。ただ、あの打席でどうだったのか、ということを聞きたいなと思っていても、その場面を体感しないと共有できないでしょ。だから聞くことはしなかったですね。

 そして近づいてもっともっとイチローさんのことを知りたいなと思うところはすごくあったのですが、チームメートとしてライバルという認識を僕は持っていました。だから『絶対に負けたくない!』という気持ちもめちゃくちゃ強かったですね。その気持ちが強かったから、安易に話しかけるということはせずに、離れて遠くから何かイチローさんの技術を盗んでやろう、という感じで当時は接していましたね。

 だから先ほども言いましたが、イチローさんは僕にとっては『目標』以外の何ものでもないです。それと僕がメジャーに行くことができたのも、ほかの野手がメジャーに挑戦できるのも、イチローさんがMLBの中で、日本人野手の価値を上げて道を拓いてくれたからだと、つくづく思いますし、そこも感謝しかないですよ」

阪神・伊藤敦規 「自分を貫く勇気がすごい」


伊藤敦規コンディショニングコーチ・56歳[オリックス時代、94年までチームメート]


「彼が(愛工大)名電高で僕が中京高(現中京大中京高)だから、沖縄で初めてアイツが一軍キャンプに呼ばれたときに『愛知県人会』もやったね。僕もそのときはバリバリでやっていたから『頑張れよ!』と言っていたんだけど、今では『頑張ってください』と言われちゃう(笑)。でも本当に努力してたよ、寮でも必ず打っていたからね。

 シート打撃で対戦して、彼がセーフティーをやったのよ、三塁側に。捕って『1-3』のプレーをやったんだけど、イチローが『伊藤さん、僕アレでアウトになったの初めてです』って。コイツ何者や!スゴいヤツだなと。『高校とはやっぱりフィールディングとかもレベルが違いますね』と言われたんで、オレは『中京で鍛えてんだ!』ってね(笑)。バットは、篠塚和典モデル(元巨人の巧打者)を使っていて、コーチに『まだ使えないだろ、おかしいぞ!』と言われても『いや、僕はコレです』と。振り子にしてもいろいろ言われても自分を貫く勇気というか、あの年でなかなかないからね」

阪神・清水雅治 「全部想定内で起きているのでは」


清水雅治ヘッドコーチ・55歳


「彼のプレーを見ていると、打つことも走ることも守ることも慌てるそぶりが一切ない。一番能力を発揮できる。全部想定内で起きていることだと思うので。そこはすごいなと感じる。(西武時代の)現役のときも対戦しているし、まあ本当にすごい。頭が下がる。打つほうですごいと言われるけど守備力も高いからね。ましてあの歳までやって、よっぽど自己管理をしているんじゃないのかな。そういうのを見習っていく気持ちがすごく大事だと思う」

ヤクルト・バレンティン 「60本はイチローさんのおかげ」


バレンティン外野手・35歳[マリナーズでチームメート]


「ボクは日本で60本塁打を達成できたけど、それはイチローさんの影響が大きいと思っているんだ。イチローさんはメジャーで次々と記録を塗り替えていったけど、日本人だからといって相手が勝負を避けたり、記録達成を邪魔するようなことはなかった。そういった姿を見ていたからこそ、日本のピッチャーも姑息(こそく)な手段は使わなかったはず。そういった風潮にしてくれたイチローさんに感謝したいね。

 マリナーズ時代にイチローさんと一緒にプレーしたことがあったけど、野球に向き合う姿勢、特に準備の部分に惹かれるんだ。どんな状況においても、常に100%の準備をしている。そのストイックな姿勢はどの選手も見習うべきだと思うよ」

ヤクルト・五十嵐亮太 「同じ時代にプレーでき光栄」


五十嵐亮太投手・40歳[ヤンキースでチームメート]


「13年にヤンキースで一緒でした。クラブハウスでは準備からケアまで『ここまでやるのか』というくらい時間をかけていた。また、それを実にスマートにこなしていたのが印象的です。まさにイチローさんスタイルという感じでしたね。

 イチローさんの『研究者でありたい』という言葉がありましたけど、あれくらいの選手になっても気付いていないことへ貪欲になっている姿、模索しながらプレーしている。向上心というか。プレースタイルも含めて、イチローさんの哲学が好きです。(00年のNPBオールスターでは本塁打を浴び)軽く運ばれたなという感じでした。体の使い方がずば抜けてうまい。効率的に芯に当てて飛ばしていた印象です。ちょっと次元が違いますね。同じ時代にプレーできていることは光栄です」

ヤクルト・塩見泰隆 「雲の上の存在の方」


塩見泰隆外野手・26歳


「小さいころからテレビで見ている大スターです。果てしない技術を持っている方。それも攻守走すべてで。すべてが備わっている選手というイメージです。同じ外野手として打撃はもちろんですけど、やはり守備でのレーザービームですかね。送球では肩が強くてコントロールがいい。本当に魅力的ですよね。リスペクトしかないです。よく『雲の上の人』と言いますけど、本当に雲の上の存在の方です」

巨人・炭谷銀仁朗 「盗塁を刺したことがあります」


炭谷銀仁朗捕手・32歳


「小さいころから活躍をテレビで見てきましたが、同じ野球選手とは思えない異次元の世界の人。実は僕が4年目の09年に1度だけ、対戦があるんです。第2回のWBCを直後に控えていた日本代表と西武が、東京ドームで壮行試合をしました。そのとき、僕はスタメンマスクをかぶっていたんですが、イチローさんが走って、盗塁を刺したんです。これはうれしかったですね。イチローさんとはその後、接点がないので、唯一にして一生の思い出ですよ。

 ただ、どうやってリードしたかはまったく思い出せない。日本代表にはあこがれていて自主トレもご一緒させてもらっていた城島健司さんもいたんですが、すご過ぎるメンバーで『すごい人たちや』としか覚えていないんですよね。今回、マリナーズ対巨人があるのでマスク越しにどう見えるのか楽しみ。マリナーズには雄星(菊池雄星)も行ったので、一緒にプレーする姿をまだまだ見ていたいです」

巨人・菅野智之 「詰まってもOKがすごい」


菅野智之投手・30歳


「日本でプレーしているイメージよりも、メジャーでの活躍や日本代表でWBCを戦っている印象が強いです。イチローさんとは接点がなくて、テレビで見ていて本当にすごい方だなと思っていました。『詰まってもOK』という言い方をされていたのを聞いたことがあるのですが、この考えや意識はピッチャー目線からいうとすごく嫌。バッターは詰まるのを嫌ってホームベースから離れてみたり、目付けを前にしたりと工夫をするので、こちらもそれに応じて対処するのですが、最初から詰まりを気にしないタイプの方は、どれだけ厳しく内角を突いても気にせずにしっかり振り切ってくる。振り切るからこそ詰まっても内野の頭を越して落ちるわけで、イチローさんのそういうシーンをよく見ますよね。あまり今の日本にはいないタイプ、マインドですよね。

 マリナーズ対巨人で僕の登板の予定はないのが残念。イチローさんを相手に投げてみたかったです。ただ、楽しみに見たいと思います」

DeNA・坪井智哉 「この年で現役は信じがたい」


坪井智哉打撃コーチ・45歳[同じ振り子打法の巧打者]


「年を重ねるとスピードや反応、筋肉と関節の柔軟性など明らかに劣ってくるものですが、それを感じさせない。本塁打打者で一発に懸けるというタイプなら理解もできますが、打って走って守ってという選手。それがこの年で現役なのは驚異的だし、信じがたいことですね。

 MLB開幕戦出場の可能性があるようですが、丸1年、投手の球を見ていない実戦の勘にどう対応するかは楽しみ。ブルペンでの目慣らしとは訳が違う。イチローはオープン戦はいつも悪いから心配していません」

DeNA・上田佳範 「宇宙人と言うほどすごいやつ、と」


上田佳範外野守備走塁コーチ・46歳[73年生まれの同級生]


「愛工大名電高とは春秋と定期的に練習試合があって、高1(松商学園高)で試合したのが初めて。相手の中村(中村豪)監督が『宇宙人』と言うほどすごいやつがいると言っていた。その後の打棒は知っていたので、甲子園で対戦したときは一番マークする選手だった。直球では抑えられないとなり、ヒザ元にカーブやスライダーばかり投げた記憶がある。

 僕らの世代でこの年まで続けているのももう一人だけ。やれるところまでやってほしいね」

広島・長田勝 「優しい人でした」


長田勝ブルペン捕手・35歳


「私がオリックスで現役をしていたころ(03〜07年)、オフになるとマリナーズのイチローさんが神戸にある球団の室内練習場に来られていました。自主トレのためです。見学させてもらったりはしませんでしたが、あいさつしに行きましたね。何年目の長田です、と。想像していたよりずっとやわらかいというか、優しい人でした。何をしゃべったか覚えていませんが、いろいろ話をしてくれたことは覚えています」

広島・西川龍馬 「究極の目標です」


西川龍馬内野手・25歳


「小さなころからあこがれていました。外野をやり始めたころは、グラブはイチローさんのモデルでした。すごいですよね、体重移動しながらボールを捉えるミート力。どこでもヒットゾーンに落とせる。大きいのを打つときは打つけど、基本的には広角にどこにでも打てる。打って守れて走れますし。同じ左バッターだし、イチローさんみたいなタイプを目指したい。究極はそこじゃないかと思うんです。あまりマネはできないですけどね」

中日・赤堀元之 「すごい打者で力が入った」


赤堀元之投手コーチ・49歳


「ほかのバッター同様、気持ち的には絶対に抑えると思って、投げていました(近鉄時代の対戦は34打数6安打の打率.176と抑える)。対戦を楽しむというのはなかったです。出番が僅差の終盤でしたから。抑えるときは大体同じでした。

 インサイドの強い真っすぐにアウトハイの真っすぐ、それにスライダー。当時2段モーションだったので、タイミングをとりづらかったのもあるのかな。僕は抑えていたほうですが、不安がないわけではなかったです。やっぱりすごいバッターなので力は入りました」

中日・平田良介 「一番最初に好きになった選手」


平田良介外野手・31歳


「イチローさんは子ども時代のあこがれの選手でした。プロ野球を見るようになって、一番最初に好きになった選手です。バッティングもすごいし、守備もすごい。なんでもできる選手。本当にあのシルエットが好きでしたね。

 僕は右打者でしたけど、左で振り子打法のマネをよくしていました。メジャーに挑戦する際は、イチローさんが成功しなかったら、日本人野手で成功する人はいないなどと聞きましたが、僕は絶対に成功すると思っていました」
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