リリーフ投手に苦しんだ昨季の広島。その中にあって、勝利のかかった7、8回に連日のようにマウンドに上がってバトンをつないだのが、塹江敦哉だった。プロ入り初めてのフル回転の1年。快速左腕はその経験に何を思い、そして新たなシーズンに向かうべき場所を、どう定めたのか――。 文=藤本泰祐 写真=前島進 
ブルペンで投げ込む塹江。チェンジアップの習得を目指しつつも、自らの投球の軸がストレートとスライダーであることは忘れていない
武器となった、「無我夢中」と「割り切り」
「チームが困ったときに、自分の名前が呼ばれるような1年にしたい」。それが、昨シーズンを前にした塹江敦哉の目標だった。果たして2020年のシーズンは、そのとおりのものとなった。いや、予想以上のものとなった、と言うべきかもしれない。開幕当初はゲーム中盤の中継ぎでスタートしたが、無失点を続けるうち、あっという間に担当イニングは終盤になった。やがて、7回、8回を迎えて広島に勝利の目があれば、マウンドには必ずと言っていいほど、その姿が見られるようになる。52試合に登板し、3勝4敗、19ホールド。大車輪の1年が終わった。
「シーズンの最初は、“自分ができる限りの準備をして、それで打たれたら仕方ない”と思ってマウンドに上がっていました。だから投げる場所(イニング)が変わっても、新しくあれこれしようというのはなかったですね」
無我夢中に加えて、割り切りが武器となった。普段から厳しい表情とは無縁なタイプの塹江だが、ピンチになってもマウンド上でその表情が変わらないところがむしろ頼もしい。それは、昨年、冒頭の目標を立てたときに考えたことが元になっているという。
「目標のためにはピンチで抑えなければいけない。そのためにはどういう心持ちで行くべきか。思ったのは・・・
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