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久本祐一 投手 #65

先発、中継ぎとフル回転したサウスポー

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 輝きを取り戻した。1年前、中日から戦力外通告を受けた久本祐一は、ユニフォームを赤に変えて左腕を振り続けた。43試合の登板は、中日時代の03年の51試合に次ぐ、キャリアで2番目の数字。その中で先発は8試合と、ユーティリティーサウスポーとして、チームの16年ぶりのAクラス進出に大きく貢献した。「先発もあると思って、自主トレから準備していました。どっちでも使ってもらえて、僕の長所を生かしてくれたと思います」

 だが、常勝軍団を知る男にとって、達成感は首位の盛り上がりとはかけ離れている。「今年の経験は、来年結果を残してこそ評価される。やっぱり優勝したいから」

 現役引退も覚悟した左腕の心を奮い立たせたのは、もう1度「祝杯」を挙げたかったからだ。春季キャンプで、200球を超える投げ込みを平然と行い、総投球数もチームNo.1。それに加え、若手以上の走り込みで、周囲を驚かせた。「1年間戦うために必要なこと」と自らのスタイルを貫いた。

 広島での初登板は開幕2戦目の3月30日の巨人戦(東京ドーム)。しかも、先発を任された。4回4安打無失点の好投。先発ローテに名を連ね、初勝利は4月26日(マツダ広島)。古巣・中日を相手に、5回までに137球を投げる力投で1失点に抑え白星を手に入れた。

 その後は、本職の中継ぎでフル回転。シーズン中盤は制球難に陥り、二軍落ちも経験したが、一軍再昇格後は、9月に2度の先発を任された。「何でも屋」の存在がなければ、初のCS進出もなかったかもしれない。もう1度頂点に立つために。34歳の心は真っ赤に染められている。

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