当時としては追い打ちをかけるような悲劇だった。3月29日の
阪神戦(京セラドーム)で35年ぶりの開幕3連敗を喫した直後、その試合で負傷し、病院で検査していた
森野将彦が右母指末節骨骨折と診断された。
「仕方がない。1日も早く復帰できるようにやってもらいたい」
谷繁監督兼選手は苦々しい表情で説明していた。思わぬアクシデントが襲ったのは森野が中前打で出塁した直後の1回一死一、三塁。ルナの三ゴロの際、三塁から二塁へ転送され、さらに併殺を狙った二塁・上本の一塁への送球が二塁ベースに両手を広げて滑り込んだ森野の右手親指を直撃した。もん絶したまま交代すると、大阪を離れて名古屋市内の病院へ直行。翌日の検査結果も同じで全治は2カ月と診断された。
「痛みはまだあります。今は汗をかいちゃいけないから動けない。チームの指示に従って復帰に向けてやるだけです」。同31日にナゴヤ球場を訪れた森野は険しい表情だった。今年は開幕から3試合連続安打を放つなど好スタート。だからこそ、三番打者の離脱はチームにとって大きな痛手であり、誤算だと思われた。だが、それが逆の誤算を生むとは……。
同日の
巨人戦(ナゴヤドーム)、森野の代役としてスタメン出場した福田が先制2号ソロを含めて3安打2打点と大活躍。今季初勝利をもたらすと、4月2日の巨人戦(ナゴヤドーム)でも巨人のセットアッパー・山口から豪快な3号2ランを放って快勝。文字どおり起爆剤になったのだ。
福田は森野が故障しなければ現在も出る幕はなかっただろう。誤算による誤算、そうやって開幕3連敗からの逆襲は生まれた。