全国大会3季連続4強から見えた“応用力“の養成

東北福祉大との大学選手権準々決勝では、劣勢の展開からサヨナラ勝ち。追い詰められてからの底力こそ、上武大のスタイルだ/写真=矢野寿明
チームには、受け継がれた伝統の力がある。今年6月の全日本大学選手権で3季連続のベスト4に進出した上武大といえば、「粘り強さ」だ。
1982年創部。関甲新学生リーグで最多28度の優勝を誇る。2000年に谷口英規監督が就任してからは大学選手権13度、明治神宮大会7度出場。13年には大学選手権で初優勝を遂げ、全国屈指の強豪校となった。
今春の大学選手権でも、伝統の粘り強さを発揮している。
初戦はタイブレークの末、福井工大(北陸)に3対2でサヨナラ勝ち。東北福祉大(仙台六大学)との準々決勝でも最終回に底力を見せる。
3対0とリードして迎えた9回表の守り。2本の長打などで1点差に迫られ、なお一死二塁の場面。左翼前への飛球に市根井隆成(2年・前橋商高)が飛び込む。キャッチしたかに見えたが、捕球は認められず、同点に。谷口監督が猛抗議するも判定は覆らず。次打者に右翼線へ適時三塁打を打たれ、逆転(3対4)を許した。
この逆境でも、あきらめなかった。谷口監督は9回裏のベンチの様子を「選手たちは判定には触れず、『みんなで戦おう』という声しか出ていなかった。私も『冷静になってやろう』と言っただけ」と明かした。
9回裏の粘りは、すさまじかった。先頭の
鳥巣誉議(3年・久留米商高)が右前打、続く長澤壮徒(4年・甲府工高)の二ゴロが敵失を誘って無死一、二塁とする。ここで次打者がスリーバントを失敗するも、続く市根井の左前適時打で同点とし、一死一、二塁から
吉田高彰(2年・智弁学園高)が左前打を放ったが、二塁走者の長澤が三塁をオーバーランしたところを刺され、二死一、二塁となった。
だが、ここで終わらないのが上武大だ。次打者の
小豆澤誠(3年・飛龍高)が右前打を放ち、サヨナラ勝ち(5対4)。東北福祉大・
大塚光二監督(元
西武)は、上武大を称えた。
「ウチが押していて、上武大さんにミスが出た。普通なら『もう……』となるところ。でも、上武大さんには精神的に強い選手がウチより多かった。そこに尽きると思います」
これに対して、谷口監督は言った。
「練習量だけはやってきた。選手たちは『やれる』という自信を持っていると思う。規律やマナーなども含めて、取り組んできたことが見えない力になっています」
チームの源流は部員238人の結束力
238人の部員全員が全力疾走やカバーリングなどを徹底。「誰かのミスをカバーしよう」と言い合っている。控えの4年生たちは夜遅くまで対戦相手の分析をするなど、自主的に裏方の仕事をしている。そうした一つひとつが、238人を束ねる。そのチームワークが、劣勢でも揺るがない粘り強さの源となっている。
準決勝では中央学院大(千葉県)に1対5で敗戦。指揮官の口調は厳しかった。
「完敗です。練習をやってきた自信はあっても、試合での応用力がないのが課題。秋に向けて、我慢強くやっていきます」
全国大会3季連続の4強。それは、3季連続で準決の壁に阻まれたということでもある。だが、今年の上武大はスタメンのうち4年生が3人という若いチーム。今は未完成でも、夏に課題を乗り越え、秋には壁を打ち破る可能性を秘めている。(文=佐伯要)