
5月7日の西武戦[PayPayドーム]に先発した石川。8回2失点ながら勝敗はつかず[写真=湯浅芳昭]
野球界全体で試合時間短縮が叫ばれて久しい。野球は間(ま)のスポーツであり、それが勝敗の行方を左右する部分もあるが、それでもやはりいたずらに時間をかけるのは良くない。何事もキビキビと動き、スピードアップを図るのは重要なこと。投手においては1球1球、投げるのに間延びしてはダメだ。そうすると守っている野手も投手のテンポが悪いと注意が散漫になり、悪影響が及ぼされるのは間違いないだろう。
現在の球界で抜群の投球テンポを誇るのは
石川柊太(
ソフトバンク)だ。昨季は18試合で11勝3敗、防御率2.42。初タイトルとなる最多勝、そして勝率.786で勝率第一位を獲得。
巨人との日本シリーズでは第2戦(京セラドーム)で先発し、5回1/3を2失点で勝利投手に。チームの日本シリーズ4連覇に貢献した。
オフには「スピードアップ賞」を受賞。これは先発で100投球回以上、リリーフで40投球回以上、または総投球回が100回を超えた投手の中で無走者時の平均投球間隔が最も短かった投手が表彰される。石川は8.8秒だったが「まだまだ、自分の実力や成績について満足できない部分はたくさんありますが、スピードアップは自分自身の問題なので、もっとテンポ良い投球をして、この賞の価値が高まるように精進していきたいです」とコメント。ちなみにセ・リーグは
戸郷翔征(巨人)で10.8秒だったから、石川のテンポの良さが際立つだろう。
今季は3月26日の
ロッテ戦(PayPayドーム)で初の開幕投手を務め、7回1失点の好投を見せて勝利をつかんだ。続く4月2日の西武戦(同)は6回6失点と崩れたが、その後は持ち直している。5月7日、3たび西武相手に先発。この日も西武打線相手にスイスイと投げ込んでいった。
140キロ台中盤の力のあるストレートにキレのいいスライダー、パワーカーブを主体に投球を構成。フォークもあるがすべての球種のコントロールが優れているから、投手が有利な状況で勝負することができる。
ただ、より高いレベルの投手になるために、時には繊細な投球も心掛けてほしい。この試合ではまず4回だ。2対0とソフトバンクがリードした状況。石川は
中村剛也、
栗山巧を簡単に打ち取り、打席にこの日、ケガから一軍復帰した
山川穂高を迎える。初球はスライダーで見逃し、2球目はフォークでボール。1─1からの3球目だ。真ん中に入ったパワーカーブを左翼席へ運ばれた。おそらく石川が早いカウントでストライクを取るとき、打者が狙うのはストレートかパワーカーブだ。山川は若干甘くなったパワーカーブを狙い打ちした。
1対2で迎えた7回も同様だ。先頭の栗山に初球、
シュート回転した真ん中外寄りのストレートを狙い打たれ左中間席へ同点弾。結局、石川は8回2失点でマウンドを降り、試合は2対2の同点に終わった。9日現在、石川は防御率2.74ながら1勝2敗と勝ち星が伸びていない。常にエース級と投げ合う開幕投手の宿命で打線の援護に恵まれない面もあるが、テンポの良い投球の中でエアポケットに入るような場面をなくしていけば、必ずや勝ち星はついてくるだろう。
PROFILE 伊原春樹/いはら・はるき●1949年1月18日生まれ。
広島県出身。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、71年ドラフト2位で西鉄入団。76年巨人に移籍し、78年古巣ライオンズに復帰して80年限りで現役引退。通算成績は450試合出場、打率.241、12本塁打、58打点。81〜99年に西武で守備走塁コーチを務め、西武黄金時代の名三塁コーチとして高い評価を受ける。2000年
阪神コーチ、01年西武コーチから02〜03年西武監督、04年
オリックス監督を歴任。07〜10年巨人ヘッドコーチを務め、14年は西武監督。現在は野球解説者として活躍している。