ごひいきのチーム命で、その勝敗にしか興味がない。もしも、その手のファンしかいなかったとしたら、今日のプロ野球の繁栄もないだろう。先の
ソフトバンク対
阪神の日本シリーズだって、注目していたのは両軍のファンだけではない。
そのシリーズの幕切れは前代未聞で、たしかに唐突だった。が、最後の打者、そして最後のアウト(守備妨害)となった
西岡剛(阪神)を責めるどころか、「さすが!」と溜飲を下げたのは私だけだったろうか。
プロは夢を売る商売でもある。ただ勝てばいい、それだけなら生涯をアマチュア野球に捧げればいい。
1点を追う阪神の9回表の攻撃は、ヒットと2連続四球で満塁。カウントはなお、3ボール1ストライク。マウンドの守護神は明らかに制球を乱している。
学生野球ならば、ほぼ間違いなくベンチから「待て!」のサインが出ただろう。あるいは打つことを自ら放棄し、打席内を動いたりバントの構えをするなどして、何とか押し出し四球を奪おうとする絵も想像に易い。
しかし、そこはプロ野球。しかも打者はメジャー・リーグも経験している西岡だ。当然、ストレート一本に絞ってフルスイングするはず。彼らプロの打者は打つためにこそ練習し、打つことで人々を喜ばせ、高い報酬を得ているのだ。
私はそう思いながら見守ったが、嫌な予感も少しだけよぎった。伝統の超人気球団、そして熱狂的な応援……まさか、シガラミに屈しはしまいか、と。
描くビジョンも精査もなく、場当たりな損得勘定や打算がやたらと目に余るこの時代。結局、他力本願やリスク回避の鬱屈した日々を私ら凡人は生きていくしかないが、せめてプロ野球はそんなダークグレーに染まることなく、夢を見せてほしい……。
西岡はストレートを打った! 結果は一塁ゴロでまず本塁封殺、そして一塁への走路がスリーフットラインの外、フェアエリアだったことから守備妨害(アウト)となり、ゲームセット。
感激は続く。球審の冷静さと毅然とした態度だ。まずは本塁のフォースアウトを
ジャッジ、そして捕手の体越しに一塁へ走る西岡の走路を確認している様子がリプレーのVTRに映っていた。
打者走者の走路の確認は球審の当然の役目。そして一塁線に絡むプレーで西岡のような走塁があれば、アマチュア野球では即刻アウト、一塁線に絡まないプレーでも球審は打者走者を呼び寄せて注意する。
日本シリーズの最後のプレーで守備妨害のジャッジを下した球審は、本塁に突入した二走のクロスプレーをジャッジしなかった。なぜなら、西岡の反則走塁で試合は終わっていたからだ。あの究極の土壇場で、あれだけ適切に仕事をこなせるとは……審判もさすがプロである。
逆転場面のない大味なシリーズだったけど、プロ野球って、やっぱりいいね! その晩遅く、そんなメールが一通だけ届いた。(Hit&Run大久保)