小さいころからあこがれた捕手という場所でプロ入りを果たした原口文仁。入団後はケガに泣かされ、一軍へ上がっても、一塁へのコンバートもあった。だが「自分は捕手だ」という強い意思を持ち続け、今季は捕手一本で挑戦を続ける。その強い意思が、攻守で原口の持ち味を引き出している。 文=長友孝輔(サンケイスポーツ)、写真=BBM 好きな野球を一途に
午前6時30分。夏休み最後の週末を迎えた東京駅は、人があふれ返っていた。眠い目をこする子どもに、その手を引く親。朝の光が差し込むホームから、きらきらした旅へ、今まさに出発しようとする人たちばかりだ。そこを1人の男が早足で通り抜ける。両手でキャリーバッグを引き、両肩にもバッグを背負う。2017年8月26日。この日、出場選手登録を抹消される原口文仁だった。前夜、東京ドームでの試合後に通達され、鳴尾浜へ向かおうとしていた。遠征先から二軍へ降格する際は、基本的にバットなどの用具類を自分自身で運ぶ。華やかな世界から離れ、大荷物で“片道切符の旅”に出た。
「アイル・ビー・バック! ですよね? こういうときに言うのは」 映画の名ゼリフと、ニヤッとこぼした白い歯で、悔しさを覆い隠し、のぞみ5号へ乗り込む。車両の座席最終列のシート背後のスペースに、荷物を押し込んだ。整え
「ヨシッ!」と指差し確認。これをしなくては気持ちが悪い。そういう性分だ。座席に体を沈めると列車が動き出す。育成枠から支配下再登録を勝ち取った16年4月以来、初めての二軍降格。たどり着く先がどんなに厳しい場所か。戻ってくる道のりがどんなに険しいか。誰よりも知っているからこそ、この・・・
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