パのほうが先発陣に余裕があった!?

日本シリーズ初戦に先発し、6回1失点だったオリックス・山本
日本シリーズがスタートし、第1戦はオリックスの
山本由伸が6回、
ヤクルトの
奥川恭伸が7回を投げともに1失点。第2戦はオリックスの
宮城大弥が7回2/3を1失点、ヤクルトの
高橋奎二がレギュラーシーズンでもやったことがない完封劇を演じた。両チームの先発投手は十二分に期待に応えている。
ペナントレース中の先発は中6日が主流となっているが、日本シリーズにこれを当てはめると第1戦の先発は第6戦、第2戦が第7戦ということになり、先発は5人必要になってくる。しかし短期決戦はペナントレースとは違う。登板間隔を詰めて使ったり、その戦略はさまざまなものがある。
現行の12球団(
楽天加入)になった2005年から昨年まで、16年間で2度先発した投手の登板間隔を見ると(カッコ内は先発投手の勝敗)、
中4日=19人 セ12人(2勝4敗) パ7人(2勝3敗)
中5日=14人 セ 8人(2勝2敗) パ6人(1勝1敗)
中6日= 3人 セ 0人 パ3人(0勝2敗)
中7日= 2人 セ 1人(0勝0敗) パ1人(1勝0敗)
と中5日よりも中4日の方が5人も多かった。
中4日の19人は(監督のあとの勝敗は先発以外の責任投手)、
2006年第5戦
日本ハム○ダルビッシュ 監督・ヒルマン
2006年第5戦
中日●
川上憲伸 監督・
落合博満 2007年第5戦 日本ハム●ダルビッシュ 監督・ヒルマン
2008年第5戦
巨人 上原浩治 監督・
原辰徳○
2008年第5戦
西武●
涌井秀章 監督・
渡辺久信 2008年第7戦 巨人
内海哲也 監督・原辰徳●
2009年第5戦 巨人
ゴンザレス 監督・原辰徳○
2010年第7戦
ロッテ 渡辺俊介 監督・
西村徳文○
2011年第5戦 中日●チェン 監督・落合博満
2012年第5戦 巨人○内海哲也 監督・原辰徳
2012年第5戦 日本ハム●
吉川光夫 監督・
栗山英樹 2013年第5戦 巨人 内海哲也 監督・原辰徳●
2013年第7戦 楽天○
美馬学 監督・
星野仙一 2013年第7戦 巨人●
杉内俊哉 監督・原辰徳
2014年第5戦
阪神●
メッセンジャー 監督・
和田豊 2015年第5戦 ヤクルト●
石川雅規 監督・
真中満 2016年第5戦
広島 ジョンソン 監督・
緒方孝市●
2018年第5戦
ソフトバンク 千賀滉大 監督・
工藤公康○
2018年第5戦 広島
大瀬良大地 監督・
緒方耕一●
だが、19人中勝利投手となったのは3人しかいない。また中4日同士の投げ合いは5度あったがパが3勝2敗と勝ち越し。巨人の原監督は2019~20年は4戦で終わったため2度先発する投手はいなかったが、2008、09、12、13年と出場した4度とも中4日でエース級を登板させた短期決戦モードで挑んでいた。
投手王国であれば、5人目の先発も用意できるが、短期決戦の場合はどうしてもエースに頼らざるを得ないのが現状だろう。2013年の楽天からパ・リーグが8年連続日本一となっているが、その間パの2度に対してセは6度も中4日の登板があった。パのほうが先発陣に余裕があったということなのかもしれない。
過去には一人で4戦4勝も

59年の日本シリーズで4連投4連勝した南海・杉浦
近年は中4、5日の登板間隔が主流となっているが、過去にはとんでもないこともあった。
日本シリーズ史上初の3連敗4連勝を達成した1958年の西鉄(対巨人)。
稲尾和久は第1戦に先発し4回3失点で敗戦。中2日の第3戦で完投負け。雨天中止を挟んで第4戦も先発し完投勝ち。翌日の第5戦はリリーフで7回を投げ勝利。移動日のあとの第6戦を完封、第7戦も8回まで0を並べ、9回にルーキーの
長嶋茂雄にランニング本塁打を打たれるが完投勝ちし、6試合に投げ4勝2敗というとてつもない記録を作った。翌1959年は南海が巨人にストレート勝ちをするのだが、エースの
杉浦忠は第1戦が8回3失点で勝利。第2戦は5回からロングリリーフし勝利投手に。移動日後の第3戦は延長10回を完投勝ち。雨天中止を挟んでの第4戦は完封勝ち。こちらは4戦4勝でのシリーズ制覇。この2年はともに「雨天中止」の1日がキーポイントとなったとも言える。
巨人V9最後の1973年の南海との日本シリーズでは、
第1戦 ●
高橋一三 第2戦
倉田誠-○
堀内恒夫 第3戦 ○堀内恒夫
第4戦 ○高橋一三
第5戦 ○倉田誠-堀内恒夫
と巨人は5戦を3人の投手でまかなった。
1975年の阪急は初出場の広島に対し4勝2分けだったが、6試合(引き分けた試合は延長戦)を
足立光宏、
山口高志、
山田久志、
戸田善紀の4人の投手で日本一となった。そもそもこのときの阪急は日本シリーズメンバーに投手を7人しか登録していなかった。サラリーマンもがむしゃらに働いていた時代、投手もがむしゃらに投げていた。1980年代はペナントレースでも中4、5日の投手が多くなり、その頃の日本シリーズは先発3人、エースは中3日の第1、4、7戦で投げるのが主流となっていたが、そのスタイルも1992年のヤクルト(対西武)の
岡林洋一が最後となった。
今シリーズ、ヤクルトは奥川、高橋を1、2戦で先発させたが、奥川はペナントレース中は中10日前後の登板。完封した高橋は今季最多の133球を投げている。奥川、高橋を中何日で起用するのか。一方オリックスの山本は初戦で112球投げているが、こちらも短期決戦モードの中4日を発動するのか。同級生の
中嶋聡、
高津臣吾両監督の先発投手の起用が注目される。
文=永山智浩 写真=BBM