ONそろい踏み?

ダイエー時代の王監督
間違いは誰にでもあるもの。失敗しない人はいない。失敗を認めない人がいるだけのことだ。ただ、どういうわけか失敗しても笑って許されるタイプの人は一定数いる。プロ野球の選手はもちろん、監督も人の子。なにかを間違えることはあるだろう。笑って許されるタイプの筆頭格は、やはり2期にわたって
巨人を率いた
長嶋茂雄監督になるだろうか。
現役1年目から本塁打でベースを踏み忘れて、本塁打だけでなくプロ野球で例のない新人トリプルスリーまでフイにしながら、これを大物ぶりと評されるような長嶋監督だが、指揮官としては選手の交代を審判に告げる場面は見せ場(?)で、伝説的なものから都市伝説に至るまで、数々の逸話が残る。間違っているようで間違っていないエピソードでは、左腕の
河野博文を救援のマウンドへ送る際に「ピッチャー、ゲンちゃん」と言ってしまった、というもの。このゲンちゃんとは河野のあだ名で、ふだんから「ゲンちゃん」と呼んでいるうちに、つい試合でも言ってしまったのだとか。
現役時代は巨人で長嶋と“ON砲”を形成して一時代を築いた
王貞治監督も負けていない。ダイエー時代だが、二死満塁という緊迫の場面で「
吉田豊彦」というべきところを「
吉田修司」と
コール。あわてて登板した吉田修だったが、ローズに2点適時打を浴びている。もちろん、というのも妙だが、この類のものは長嶋監督のほうが多く伝わっている。
一転、審判が言い間違えると笑って許されなくなる。判定のミスは試合の紛糾にもつながるが、観客へのアナウンスでも油断はできない。長嶋監督が巨人を、王監督がダイエーを指揮していた96年のことだ。
ヤクルトの選手が退場になった際、処分を説明するアナウンスで「スワローズ」を「アトムズ」と言い間違えてしまった。まだ
ソフトバンクをダイエーといってしまう長いファンもいるかもしれないが、アトムズはヤクルトがサンケイ時代の1966年から73年までの短い期間の呼称。なかなかレアな言い間違いだが、これで責任審判には制裁金3万円と厳重戒告の処分が下されている。
文=犬企画マンホール 写真=BBM