見えてきた戦う形

6月3日の日本ハム戦では8回、左翼へ一発。これでこの試合、3打数連続本塁打となった大山
6月5日、超満員の甲子園。3回、日本ハム・
吉田輝星が投じたインハイ真っすぐに反応する。とらえた瞬間、ファウルになるかと思ったが、切れることなく、レフトスタンドに飛び込む3ラン。淡々と塁上を回る
阪神・
大山悠輔に日本ハムベンチのBIGBOSSが拍手を送った。
眠れる虎の主砲のスイッチが入ったのは、6月1日、
西武戦(甲子園)での第1打席、空振り三振ではないか。5月の月間打率は.182、チームは前日の敗戦で早くも自力Vが消滅していた。この日の第1打席も走者二塁の好機で三振。しかし、これで「思い切っていくしかない」と開き直った大山は続く3回の打席でレフトスタンドに3ラン。チームも5対4で勝利した。
続く2日の試合を
ガンケルの投打にわたる活躍で連勝し、西武3連戦を2勝1敗と勝ち越し、同じく甲子園での日本ハム3連戦だ。相手の指揮官は、甲子園に愛された男、BIGBOSS。メンバー交換のあとライトスタンドの阪神ファンに帽子を高く揚げると、大きな拍手が起こった。その初戦、日本ハムが序盤からペースを握り、一時は1対7となるが、見事な逆転劇で9対7と勝利。立役者はやはり大山だった。「あきらめていた選手はいなかった」と、なんと3打数連続本塁打。
大山の勢いは止まらず、
青柳晃洋が好投し、3対0と勝利した翌4日は決勝打ともなった先制タイムリーを含む3安打。さらに5日には、冒頭の3ランでチームは8対3の勝利。これで6月無傷の5連勝だ。
「いい準備ができていた」
「1点でも多く取りたい」
大山の言葉に派手さはない。しかし5連勝中4度のお立ち台で、そのオーラが日に日に増していることは間違いない。
開幕9連敗のどん底から、まず立ち直ったのは投手陣だった。防御率0.98の青柳を軸にチーム防御率は2.78まで改善している。そして今、大山を中心に打撃陣もあとを追う。誰も見たことのない奇跡の第1歩は、現在2位の交流戦制覇だ。
写真=早浪章弘