
2009年夏の甲子園での菊池雄星くん。ここで野球人生が終わらなくて本当によかったと思う
季節外れもいいところだが、『熱闘甲子園』の話をしたいのだ。夏の甲子園開催期間の夜、テレビ朝日系列で放送される、あの番組。
決勝戦の夜に流れる最終回は、全試合から選り抜いたいい映像、泣ける映像を編集したハイライト映像を流すのが恒例だ。
夏の甲子園のあり方については、この連載で何度となく批判しているが、それはそれ、これはこれ、「ハイライト映像」を毎年楽しみにしている私がここにいる。
そんな私の選ぶ、ベスト・オブ「熱闘甲子園ハイライト映像」は2009年版だ。秦基博の名曲『Halation』に乗せて、智弁和歌山高の
西川遥輝くんや
岡田俊哉くん、明豊高の
今宮健太くんが躍動するのだが、主役は何といってもこの年、準決勝で敗退した花巻東高の菊池雄星くん。
154キロの速球を投げ、打者走者として一塁で相手野手と激突して転倒、背中に激痛を感じながら投げ続け、明らかに不調な投球をレフトに鮮やかに打ち返される。
さすがの主役は、その後のインタビュー映像まで挿入される。菊池雄星くんは号泣しながら、この世の終わりのような形相でこう語るのだ。
「人生最後の試合だと思って投げ切ろうと思って――」
さて、以上は音楽で言えばプログレッシブロックのように長いイントロである。今回は、12月10日の朝日新聞に掲載された菊池雄星のインタビューが劇的に素晴らしいので、紹介したいのだ。
ただスペースが尽きそうなので、金言だらけの中から1つだけ発言をピックアップする。
「プロとして15年間プレーしてきて、組織を強くするのは、誰からもリスペクトされる人間的にも成熟したリーダーだと痛感してきました。メジャーでは、尊敬される人は『He's always the same guy』という言葉でたたえられます。『いい時も悪い時も、いつも一緒だよね』と。感情的にならず、精神的に安定している人こそ一流です。そんなリーダーのいるチームは強いです」
菊池雄星は言葉を持っている。
今永昇太といい菊池といい、メジャーで活躍する日本人左腕は言葉のコントロールも抜群だ。
今回長いイントロを置いたのは、あのときの菊池雄星くんに、こう伝えたかったからである。
「雄星くん。高校生のクセに一時の感情で『人生最後の試合だと思って』なんて言うんじゃない。15年後、海を渡って活躍する君の言葉を待っている人がいるんだよ。大事なのは、YUSEI's always the same guy」
PROFILE スージー鈴木●1966年生まれ、大阪府出身の野球文化評論家、音楽評論家。『9の音粋』(BAYFM)の月曜パーソナリティ、『ザ・カセットテープ・ミュージック』(BS12)のレギュラーMCとしても出演中。近著に『弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる』(ブックマン社)、『サブカルサラリーマンになろう』(東京ニュース通信社)。