昨年3月から5月まで東京ガスの臨時コーチを務めた武田一浩氏との出会いが、石川歩の運命を変えた。的確な指導でメキメキと実力を伸ばし、ドラフトでは2球団競合の末にロッテに入団。晴れてプロとなった石川に、キャンプ地・石垣島を訪れた武田氏と当時、そしてこれからについて語り合ってもらった。 構成=吉見淳司 写真=内田孝治、BBM 何かひとつ、自分も武器を持たないと残れない 武田 キャンプももう終盤だけど、ここまでの手応えはどう?
石川 フリーバッティングで投げたんですけど、自分の感覚は悪くないのに打たれる感じがします。
武田 だって真っすぐって分かって打つんだから。アマチュアじゃないんだぞ(苦笑)。
石川 いい感じで投げられたときはファウルを取れていたんですけど、ほんのちょっとでもシュート回転したり、弱かったりしたら打たれてしまいますね。
武田 自信なくしてるの?
石川 ブルペンで投球していると、「ほかのピッチャーは良いなあ」と。
武田 それは、例えば誰。
石川 大嶺(祐太)です。初日に相当良い球を投げていて。ほかにも成瀬(善久)さんだったら真っすぐが伸びるし、唐川(侑己)もそういうタイプ。みんな特徴があるんだなと。何かひとつ、自分も武器を持たないと残れないなと思いましたね。
武田 先発ローテで投げているピッチャーはやっぱり特徴がある。
石川 真っすぐが球速以上というかフォームに力感がなくても走っていますよね。唐川とか特に。140キロくらいの球速でも空振りが取れるし、そこがすごくうらやましいですね。
武田 石川は何が武器になると思う?
石川 僕ですよね……。う〜ん……。
武田 お前も基本はキレなんだよ。普通に投げていれば変わらないくらいできる。自信はなくさない方がいいよ。じゃあ、自分が優れているところは。
石川 優れている点は……ないです。
武田 ないの? そんな自虐キャラだったっけ(笑)?
▲先発ローテには成瀬、涌井などそうそうたるメンバーが候補に挙がるが、石川もそこに加わる力はあると、武田氏は太鼓判を押す
石川(笑)。いや、でも本当に。真っすぐが速い人もいますし、コントロールが良い人もいれば、変化球の良い人もいて。
武田 今まで見たことがないでしょ。アマチュアで対戦して「良い投手だな」と思ったことはあっただろうけど、みんなそんなのばかりだから。
石川 人が投げるところを後ろから見ることがあまりなかったんで。自信をなくしたというか、このままじゃ厳しいかもと。
武田 その気持ちがあれば大丈夫。俺も1年目はそういう気持ちで、「このままだと3年でクビになるな」と思って、必死に練習した。お前の才能だったら、普通に頑張ればできるから。