古豪「HEIAN」春初制覇 | 野球コラム - 週刊ベースボールONLINE

2014年4月11日(金) 0:00

創部107年目、春夏通じて全国最多70回目（春38、夏32）の出場を誇る古豪・龍谷大平安が、初めて紫紺の大優勝旗を手にした。第86回選抜高校野球大会の決勝が4月2日、阪神甲子園球場で行われた。履正社（大阪）との“近畿対決”は、箕島（和歌山）が浪商（大阪）を8対7で倒した1979年以来35年ぶり。地元2校の顔合わせに、4万1000人が集まった甲子園の大観衆は熱狂した。
写真＝BBM

▲龍谷大平安・中田が絶体絶命のピンチを脱した直後の9回表、一死二塁から主将・河合が右越えの一発。試合を決定づける2ランとなった

　光の裏に屈辱あり。古豪ともなれば常に、結果が求められる。2008年から平安から校名変更となったが、ユニフォーム左肩に“龍谷大学”と入った以外は、伝統の〝HEIAN〟のデザインは何も変わらない。センバツ初優勝に至るまで、龍谷大平安には忘れられない、2つの敗北があった。

　昨春のセンバツ初戦（2回戦）。早実（東京）との“古豪対決”では、2点リードも終盤に逆転負け（2対4）を喫した。夏の府大会準々決勝（対京都翔英高）では、1993年から母校を率いる原田英彦監督が「守りの平安、と言われてきた中で、信じられないエラー」で負けた（1対3）。スタンドからは、容赦ないヤジが飛んでいる。ジッとこらえ、一身に受け止める指揮官の横には選手がいた。昨春の甲子園の土も踏んでいる河合泰聖主将は「絶対、見返したる」と誓った。

　創部107年目。龍谷大平安は今大会、春夏通じて全国最多70回目（春38、夏32）の出場だった。過去に夏は3度の全国制覇（1938、51、56年）を誇るが、意外にもセンバツで決勝へ駒を進めるのは初。履正社（大阪）との“近畿対決”は、箕島（和歌山）が浪商（大阪）を下して以来35年ぶり。地元同士の顔合わせに、試合開始予定の12時30分には、内野席の一部を除いてほとんど埋まった。

　昨秋の新チーム結成時から、目標を“日本一”に設定。河合主将以下、高い目的意識を持ち、“自立”をテーマに掲げてきたチームは、監督が指示しなくても動ける〝大人の集団〟だった。不安視されていた投手力も昨秋、2年生左腕・高橋奎二が救世主となって11年ぶりの近畿大会制覇。一昨年秋には平安ボールパークが完成。毎年、冬場はグラウンドが使えなかった環境から一変、打ち込みができた。万全の準備を経て今大会に臨んでいたのだ。

▲2点リードの8回裏、龍谷大平安は一死満塁のピンチ。カウント2ボールから救援した背番号1の中田は、空振り三振、投ゴロの火消しぶり。9回裏も無失点に抑えて胴上げ投手となっている

　原田監督は左腕・川口知哉（元オリックス）を擁した97年夏の準優勝を経験。金と銀メダルの違いを知るだけに「優勝して（バックスクリーンの）校旗を上げたい。準優勝ではないですからね」と、意気込みを語っていた。

　決勝も危なげなかった。序盤からリードを奪い、2点リードの8回裏には一死満塁という絶体絶命の場面も慌てない。カウント2ボールから背番号1の中田竜次が救援。「絶対、日本一」と言う指揮官の思いが伝わった。このピンチを切り抜けると、9回表には河合主将がトドメの2ラン。バントと守りのミスを繰り返した履正社・岡田龍生監督は「完全な力負け」と、敗戦を潔く認めている。

　歓喜の胴上げは校歌斉唱＆校旗掲揚を終え、三塁側アルプススタンドへのあいさつ直後に行われた。例年は閉会式後がパターンとなっていただけに、周囲も騒然とした。理由も分かる。そのタイミング（下記写真）では、ほとんどの観衆が家路についているからだ。自称「平安ファン」の原田監督としてみれば、4万1000人に膨れ上がった甲子園の大観衆の前で“優勝報告”をしたかったのだ。

▲龍谷大平安・中田が絶体絶命のピンチを脱した直後の9回表、一死二塁から主将・河合が右越えの一発。試合を決定づける2ランとなった

▲2点リードの8回裏、龍谷大平安は一死満塁のピンチ。カウント２ボールから救援した背番号１の中田は、空振り三振、投ゴロの火消しぶり。９回裏も無失点に抑えて胴上げ投手となっている

「（就任から）21年間の教え子たちが見ているので、（冗談交じりに）『21回上げろ！』と言ったんです（苦笑）。何人かとは目が合ったので良かった。監督という立場ではなくて、平安ファンとして本当にうれしい。挫折があったから、今があるんです」

　1956年夏の甲子園制覇から半世紀以上が経過した。原田監督は言う。

「過去3回の優勝は写真でしか見たことがなかった。今回、目撃できたのは光栄です。ただ、イメージとしては『大泣きするんやろうな』と予想していたんですが結構、冷静です。心地良い疲れを感じています。選手も京都府予選と変わらず、普段通りにやってくれた。夏に勝たないと意味がないんで、またここから頂点を目指します」。

　すでに、王者の風格が漂う龍谷大平安。史上8校目となる春夏甲子園連覇を遂げるまで「絶対、日本一」の歩みは止まらない。

第10回BFA U18野球選手権
高校日本代表・第一次候補選手
日程／9月1日から7日間（タイ・バンコク）
監督：髙橋広（徳島県立鳴門渦潮高校監督）
投手

捕手

内野手

外野手

高校日本代表一次候補に26人選出

　日本高等学校野球連盟は4月2日、9月1日から7日間、タイ・バンコクで開催される「第10 回BFA　U18野球選手権に参加する高校日本代表チームの第一次候補選手を発表した。今後は夏の選手権出場校のみならず、地方大会敗退チームまで対象。最終メンバーは夏の選手権期間中に18 人が決定する。ジャパンを率いるのは鳴門渦潮高・髙橋広監督。コーチ2人は5月に発表される予定だ。