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ポジション特集第1弾 二塁手の極意

評論家・篠塚和典氏が語る「ゲッツーの魅力」

 

二塁手特集の最後は、二塁守備の見せ場でもあるダブルプレーの魅力に迫った。華麗でファンを楽しませるあのプレーにどのような美学と魅力があるのか――。野球解説者・篠塚和典氏の言葉からひも解いていく。
取材・文=椎屋博幸 写真=BBM



ゲッツーは見せ場


 試合の中では、さまざまなダブルプレーの取り方があるが、その中でも内野ゴロで完成させるゲッツーの場合、その多くは二塁手が絡むことが多い。無死一塁からのバント処理でも二塁手は一塁カバーに入るなど、ほぼゲッツーにかかわるポジションなのだ。

 ゲッツーは、一気に2つのアウトが取れること、送球が二度内野手を経由することで、ミスが起こりやすく、また成立しにくいプレーでもある。だからこそ決まったときには、大きな歓声が起こり、チームも時には勢い付く。さらに難しいプレーだけに、プロ野球ではその鍛錬された技とその華麗さから、球場のファンを魅了することも多々ある。

 二塁手がファンを魅了するゲッツーで思い出されるのは、三塁ゴロから二塁手→一塁手にわたる5-4-3、遊撃ゴロから二塁手→一塁手へと経由される6-4-3、そして二塁ゴロから遊撃手→一塁手への4-6-3だ。この中でゴールデングラブ賞を4度獲得した野球解説者の篠塚和典氏は「5-4-3」のプレーが二塁手の一番の魅せどころだという。

「理由は魅せやすいということが一番。二塁手は三塁ゴロのとき、三塁手に対し、さらに二塁ベースを正面にしてボールを待つことができます。だから捕って投げるときに無理な体の運動をしなくていい分、きれいな送球を見せられます」

 現役時代の篠塚氏の5-4-3のゲッツーは実にきれいだった。ほとんどの二塁手が三塁手のボールを二塁ベースの前でつかみダイヤモンドの内側で一塁手へ投げることが多いが、篠塚氏は、二塁ベースの後方(右中間側)50センチ〜1メートルに立ち、送球の方向に合わせてステップを踏んで投げていた。ときに、リズムカルに左足でベースを踏み後方にステップして軽やかに投げるしぐさはかっこよかった。

「あれは私が自分で考えてやっていたステップです。ベースの上で送球を待っていたら、反れたときにもう一度体を立て直さなければいけません。後方で三塁手の送球を待っていれば少々それてもそれに合わせてステップができます」

 なぜリズムカルにステップを踏めるのか。そこはやはり「足を使ったフットワークが必要」なのだ。「足を使わずに上半身だけでプレーすると良いプレーはできないですし、魅せるプレーができない」と指摘する。実際にフットワークを使えていれば、さまざまな状況にも対応できる。

 篠塚氏がもう一つ挙げたゲッツーでの魅せるプレーの一つに、緩いゴロでのゲッツーがある。これは内野手、もしくは投手が二塁へ投げるときには走者は二塁ベースに限りなく近づいている。いわゆる交錯プレーになるのだが「ここが二塁手の魅せどころ」という。送球がどの位置に来るかを確認しつつ、走者のスライディングの位置を確認。それを避けながら一塁に強い送球をしなければいけない。そのためにはやはり、フットワークが必要になってくるのだ。

 それともう一つ重要なのはゲッツーをイメージすること。「この走者のときは、こういうスライディングをしてくる。そしてどこに打球が飛んだらどういう送球がくるから、それならこのステップを踏んで投げよう」と。それは1種類ではなく数種類のパターンをゲッツーが取れる場面で一瞬にして想像し、判断しなければいけないのだ。

「二塁手の見せ場は2つ。一つは大胆なポジショニングが当たり、正面で捕球すること。ただこれは球場のファンには分かりにくいです。そしてもう一つはゲッツー。これはファンを魅了することができるプレーですよね。だからゲッツーは二塁手の花形プレーですね」

 最後に投手とゲッツーの関連性も指摘した。「ゲッツーを取れる場面で、投手が内野ゴロを打てないような高めにばかり投げるようだと、内野手はやる気はなくなし、守りにくい。でもゲッツーを取りたいという投球を見せてくれるとわれわれも『取るぞ』となる。そういう雰囲気が華麗なゲッツープレー成立するんです」

 綺麗なゲッツーを取った場面では、バッテリーと内野手が自然とそういう雰囲気になるのだという。そのゲッツーの美学を球場でぜひ味わってほしいものだ。
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