週刊ベースボールONLINE


 

あの名物コラムが帰ってきた!2009年4月から8カ月間にわたって隔週連載していた『岡田彰布のそらそうよ』が約5年ぶりに復活。現在のタイガースが抱える問題点を浮き彫りにし、ペナントを勝ち抜くための条件をOKADA流の視点で斬る。



優勝するには絶対的な武器を持つこと


 オヤジが阪神ファンで、物心ついたときからオレは阪神色に染まっていた。1962年、64年のリーグ優勝のときは選手と一緒にパレードの車に乗せてもらっていたわ。

 決まっていたかのように、阪神に入団し、以来3度の優勝に関わった。85年は選手として、2003年はコーチとして、そして05年は監督として、優勝を経験した。こんな人間も珍しいと思う。それぞれの立場で優勝の喜び、優勝への苦しみを体験できたのだから、そら貴重な経験やった。

 その3度で、いろいろな優勝への条件を知った。まず85年、オレは選手会長だった。球場を離れれば、バラバラなチームやったけど、ひとたび試合になれば、同じ目標に向かって、みんなの気持ち、目線が同じになった。ちょうど日航機が御巣鷹山に墜落して中埜肇球団社長が亡くなる……というショッキングな事故があり、このときはさすがに苦しかった。

 8月に6連敗したとき、オレは選手を代表して、吉田義男監督に直訴した。投手陣が弱いし、それなら福間納山本和行中西清起の3人のリーリーバーで、それぞれ3イニング投げさせてくれと、とんでもない申し出をした。

 これも選手の総意。勝つためにはどうすべきか。みんなが考えた。直訴はすぐには実らなかったけど、そこからかな、よりまとまりができて、それが優勝につながっていった。さらにこんなことがあった。競り合っていた広島との8月終盤のゲーム。同点で終盤、二死三塁で衣笠(祥雄)さんがセーフティーバントをやってきた。サードの掛布(雅之)さんも想定外のバントだったし、これが決勝点になって負けた。ただ、そのときに思ったわ。

「広島はウチを意識している。怖がっている。だから、ああいうプレーをやってきたんや」と。相手に意識させていること。これが分かってから、戦い方が変わった。自信を持って臨めたからな。

 2003年は星野仙一さんが監督で、オレは守備走塁と三塁コーチやった。序盤からぶっちぎった。それでも星野さんは手綱を緩めなかったし、コーチ会議でも、よく怒っていた。ただ、オレはほとんど怒られたこと、なかったわ。

 三塁ベースコーチで本塁へ、ゴーかストップを判断するポジションだけど、「思い切っていけ! 結果は気にするな」と星野さんに言われた。失敗も序盤にあったけど、あれで思い切りがついたし、間違いはなかったと自負している。

 それとバッティングが不振になったアリアスが遠征先のホテルで、「アドバイスしてくれ」と頼んできたことがあった。オレの担当外のことや。それでヘッドコーチの島野(育夫)さんに伝えると「うまくやったってくれ」の返事。オレは目立たぬように教えたけど、こういうことが、舞台裏で行われ、チームのため……という意識が優先されること。これが実に大きなことなんよ。

 自分が星野さんのあと、監督になって2年目。05年にリーグ優勝を飾ることができたんやけど、これはチームの中にぶれない大方針があったからやろな。野球はやっぱり守りよ。それも投手力や。そこでオレは考えた。普通、ラッキー7というやろ。7回に幸運が舞い降りる。そういうイニングなんだが、勝つためには相手のラッキー7をつぶせばいいということよ。ということは7回以降、絶対に勝っているゲームは逃げ切れる態勢を作る。これに尽きると判断した。

▲2005年の優勝の瞬間。指揮官としてチームを2年ぶりの頂点へと導いた



 監督として、まず最初に手がけたのは四番を決めること。これは金本知憲に決めた。「四番を打て! すべてホームランを狙っていけ」と本人に伝えて、そのあとは7回以降の投手陣の人選。そこであの3人に決めた。スピードがあって、球に力があって、さらに度胸が備わっている3人。藤川球児、J.ウイリアムス、久保田智之。そう、JFKの構築だった。

 期待どおりの働きやった。1点でもリードしてたら、7回から、この3人よ。相手はこの時点でかなりの確率で負けを覚悟する。ということは阪神とやるときは6回までが勝負という意識を持つ。こうなれば、シメたもの。相手は無理をするし、焦りも出る。常に優位に立って、試合を進められた。やはり優勝するには絶対的な武器を持つこと。これがはっきりと出た優勝だったと思う。

エース・能見が復調すればチームも乗ってくる


 さて、2014年よ。オレはユニフォームを脱いで、阪神のゲームを後ろから見ているが、9月に入るこの時期、いまの位置につけているのだから、チャンスはチャンスよ。それを裏付ける・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング