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独立リーグレポート

「動きに格闘技を取り入れた」信濃の下手投げ右腕 など

 

【BCリーグ】

信濃の武闘派が下剋上宣言

 5月27、28日は信濃がオリックス二軍と対戦。昨年まで信濃の指揮を執っていた岡本哲司監督率いるオリックスは凱旋した元信濃の原大輝捕手や柴田健斗投手らが活躍し、現役独立リーガーに刺激を与えた。

 1戦目で1対10と大敗した信濃だったが、翌日は1対1のドロー。キックボクシング経験のある3年目右腕の小川武志(松本大)が先発を任され6回無失点の好投を見せた。

 大学時代まで横手投げだった小川は信濃でスリークォーターに変えた。

「肩に違和感があり、痛みのない投げ方を模索して、腕が上がった」

 1年目オフはコロンビアリーグに参戦し、各国のパワフル自慢を相手に真っ向勝負を挑んで好成績を残したものの、レギュラーシーズン2年間の成績は勝ち負けなしの1セーブ。肩の違和感は完全に消えていたが、何かを大きく変えなければ先はないという危機感が日に日にふくらむ。

「海外では特に内角攻めを怖がったら勝負にならない。もしも当てて殴られそうになっても避ける自信があったから、あのときは開き直れた」

 結果が出なくて焦りがピークに達した昨秋、メンタル面に格闘技を生かしたコロンビア修行を思い出した。

「バランス感覚を養うために練習では下から投げることもあった。ある日、いろいろな動きを慎重に確認する中で横回転や下投げが合っていると強く感じた。思えば格闘技でも右アッパーやフックが得意だった」

 こうしてアンダースロー転向を決断。入団してから初の先発となった今年5月5日の群馬戦はクオリティースタートも勝敗つかず。2度目の先発は同じく群馬戦で3点本塁打と2点本塁打を浴び6回途中降板。

「動きに格闘技を取り入れて手応えをつかんできたのに、ここ一番で強気に内を突くことを忘れていた」

▲格闘家魂が宿る信濃の右腕・小川武志。強気な投球を見せられるか



 3年目で白星よりも先に黒星をつけられたたことで闘争心に火がつき、3度目先発のオリックス戦では強気に内角を攻めてゴロの山を築く。

「浮き上がるボールは下から成り上がろうとする自分の生き様を表しているように思える。決して故意に死球を狙わないが、野球は格闘技と同じバトル、球場はリングと同じ戦場という思いがハッキリした。この覚悟で下剋上を果たしてみせる」

 腹をくくって強気な宣言をした小川はアンダースローでスポットライトのまぶしい舞台を目指す。(リポート/メイルマン)

【ベースボール ファースト リーグ】

BFLの新たな試み

 今年誕生したベースボール・ファースト・リーグ(BFL)は、組織としてはまだまだ未熟で小さいながら、選手育成の一環として、よそのリーグでは聞いたことのないシステムを作り、独自色を出している。その一つが、『強化指定選手』と、『教育リーグ』だ。

 強化指定選手は、BFLが外へ向けて特にお薦めする選手という意味だ。月に一度の監督会議で選ばれる。

 現在、強化指定選手に選ばれているのは、福永春吾(06・クラーク国際記念高)、田井友人(06・日大)、濱田俊之(兵庫・川崎北高)、平良拓也(兵庫・沖縄国際大)、大坂誠(大阪経済大)、中川翔(大阪学院大)の6名だ。

 強化指定選手とほかの選手との違いは、リーグ選抜がNPB交流戦をする際は必ず出場できること。アピールする機会がそれだけ多い。

▲BFLの強化指定選手に選ばれている姫路・大坂誠



 また、リーグ内では今後、3チーム合同練習の計画も立てられており、その中で、優先的に練習量を多くすることなどが検討されている。

 6人に関して「よほどのことがない限り、一度選ばれれば、(強化指定から)外れることはない」(高下沢リーグ共同代表)といい、また、人数に制限はなく、それに見合う実力が備わったと判断されれば、順次選ばれていく。「逆に増えていかないと、選手たちが本気じゃないってことですよね」(06・村上隆行監督)

 教育リーグは、NPB交流戦の選抜チームに選ばれなかった選手たちの試合数確保が一番の目的ではあるが、全チーム混合で編成され、指揮を執るのは、開催球場を拠点とするチームの監督。普段は得られないアドバイスがもらえるなど、選手たちにとって魅力あるシステムだ。対戦相手は、現在は兵庫の二軍である芦屋学園BBCだが、その他の対戦相手も増やす予定だという。「教育リーグを通じて、次は自分がリーグ選抜チームに選ばれるよう取り組んでもらいたい」(06・村上隆行監督)との意見どおり、選手らの底上げにつながればいい。

 どちらも、選手たちのモチベーションアップに効きそうな面白い試みといえそうだが、広報が弱く、NPB関係者やファンにほとんど知られていないのが現状。宝の持ち腐れにならないよう、まずはしっかり根付かせることが今後の課題といえそうだ。(リポート/中川路里香)

【四国アイランドリーグplus】

大逆転をきっかけに

 首位を行く香川と2位・徳島が2連戦でぶつかる。5月30日、その第1ラウンドとなる前期9回戦(高松市)は、香川・寺田哲也(作新学院大)、徳島・入野貴大(プロ育成専門学院)の両先発が、1対1のまま8回まで投げ合う投手戦となった。

 だが8回裏、四番・宗雪将司(大商大)の1号ソロを起点に香川が2点を勝ち越す。寺田は最終回、打者2人を二ゴロに打ち取った。

 しかし、勝負はここで決しない。

 9回二死から四球、左前安打とつないだ徳島は、九番・小野知久(和歌山簑島球友会)が左翼フェンス直撃の2点適時二塁打を放ち、3対3の同点に追いつく。さらに寺田に代わった二番手・篠原慎平(今治精華高)が投げた148キロのストレートを一番・吉村旬平(光明相模原高)が左翼スタンドに弾き返す。逆転の3号2ランで5対3と試合をひっくり返すと、9回裏をクローザー・富永一(元広島育成)が3人で締め、徳島の劇的な大逆転勝利となった。

「外角のスライダーに泳いだんですけど、しっかり振り切れたので感触は悪くなかった。みんなが『どうにかしよう!』とした結果がいい方向に出たかなと思います」(小野)

「(篠原は)速いピッチャーなので、真っすぐが来るのを張って。カーブが来たときに『(次は)絶対真っすぐだ!』と思いました」(吉村)

 クリーンアップだけでなく、下位から上位へとつながる集中打が現在の徳島にはある。九番・小野から一番・吉村へとつながるラインもその1つだ。小野が「できていますね。そのライン。かなり」と答えれば、吉村も「小野さんがつないでくれたら僕が打ちます」と心強い。

▲逆転の3号2ランを放ちホームインした徳島・吉村旬平[写真左]を、同点打を放った小野知久が歓喜の雄叫びとともに迎え入れた四国アイランド



 徳島は翌31日の前期10回戦(高松市)にも5対3で勝利し、同率首位に返り咲いた。直接対決の数はあと2試合、9回二死の土壇場から見せた大逆転勝利が、前期終盤の優勝争いにどう影響していくのか。

「ひっくり返すことのできるチームが優勝できるチームだと思っているので。優勝したときって大体、ひっくり返したり接戦を制したりだから」

 2度の総合優勝を知る吉村の経験則である。(リポート/高田博史)
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