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ペナントレースエクスプレス

セ・リーグ上位3強の「これまで」と「これから」

 


写真=内田孝治、松村真行
巨人3.5ゲーム差以上での首位折り返しはV確率100%

 開幕前、巨人はVの本命だが、先発で頼れるのは、菅野智之1人では、という声も強かった。事実、序盤はそのとおりになり、菅野の投げる試合だけ“強い巨人”のイメージを与えてきた。

 その菅野のピッチングにかげりが見え始めたとき、巨人投手陣は、どう持ちこたえるのか。これが興味の焦点だった。

 しかし、そこからが「さすが巨人」だった。今季初登板の澤村拓一が8回1失点であっさり初勝利(7月6日、対中日=東京ドーム、3対1)。前日の同カードでは先発・杉内俊哉が完全な負けパターンを逆転してもらって(7対6)命拾いすると、次のマウンド(12日、対阪神=同)でキッチリ恩返し、わずか2安打の完封(5対0)。史上最速(1930回2/3)の2000奪三振も達成した。

 菅野が初回の一発に泣き、チームは完封負け(9日、対DeNA、0対3=那覇)という「ここから崩れるかな?」のイヤ〜なムードを吹っ飛ばしてくれた。また、G投には、内海哲也西村健太朗が戻ってきた。この2人がいなくても2位・阪神に3.5ゲーム差の首位なのだから、巨人の戦力の分厚さは、他チームを嘆かせるばかりだ。3.5ゲーム差以上での首位折り返しを果たした年はすべて優勝しているから、今年のV確率は100%ということになる。

 原辰徳監督は「杉内は若返ったような感じ。眠っていた細胞がムクムク起き上がってきて」とユニークな表現で「18番」を称えたが、打線に関しては、阪神の先発・能見篤史に手こずったことに対し「(低めの)ボールに手を出すと相手のペースにはまる。本当に打ち込んだとは言えない」と辛口の評。ただ、今年の巨人打線は本当に頼れる核がいないのだが(オールスター前で3割打者不在)、平均的にどこからでもチャンスが作れるという能力がある。だから3人の外国人打者が不完全燃焼でも何とか勝ち進んできた。恐らく後半も、そういう感じで行くのだろう。

史上最速の2000 奪三振を達成した杉内の力投で7月12日、巨人は前半戦首位を決めた



阪神・広島は打線で投手陣を助けたい

 巨人を3.5ゲーム差で追う2位・阪神だが、杉内にアッサリ完封された試合を見ていると、あまり強さが感じられない。スポーツ紙にはラッキーボーイになっている梅野隆太郎を外したのが失敗という論調のところもあったが、「一、二番がクリーンアップに回すことが1回しかできなかったから」と和田豊監督が言うように、上本博紀大和の一、二番の出塁が四球1つでは勝負にならない。

 27イニング連続安打や4戦連続2ケタ安打、8連勝とハデな試合をやってきたが、完封負けも6度と、意外に穴も大きい打線。しかし、13日の巨人戦(東京ドーム)は、6回まで巨人の先発・澤村に1点に抑えられていたが、7回に代打・関本が逆転満塁ホームラン(6対4)。これだからトラ打線の評価は難しい。能見篤史に勝ち運が戻り、藤浪晋太郎がスタミナ切れを起こさなければ、投手陣も何とかなる。メッセンジャーは、安心して見ていられるのだから。

6回に飛び出した関本の逆転満塁弾で7月13日、阪神は対巨人勝ち越しを決めた



 首位の巨人と5ゲーム差は厳しい数字だが、12年ぶりに前半戦勝ち越しターンを決めたのが3位・広島だ。その勝ち越しの勝ち星をもぎ取ったのがエースの前田健太。12日の対中日戦(ナゴヤドーム)で8回1失点の勝利(3対1)。これでハーラートップタイの9勝目。モタついた序盤のピッチングとこれで完全にオサラバだ。連敗を4でストップさせたのも価値がある。

連敗を4で止め、ハーラートップタイの9勝をマークした前田健(7月12日、対中日)。頼りになるエースの存在は広島にとって大きい



「とにかく連敗を止めようと必死で投げた。後半戦も大事な試合で負けないようにしたい」と前田。4連敗中は、先発が平均4イニングちょっとしか持たなかった。「先発が順調にいかなかったからねえ。エースの働きだった」とは野村謙二郎監督。チーム防御率3.87は巨人の3.79とほぼ互角。あとは、打線がどう効率よく点を取るかだが、エルドレッドの本塁打量産が頭打ちの気配。過去2年、65、66試合の出場。フルシーズンの活躍には不安が残る。キラが復調して、エルドレッドと交互に打つ形になると、野村監督も作戦が立てやすくなるだろう。

 17日終了時点で、巨人は対広島5勝6敗、対阪神5勝7敗、広島は対阪神4勝6敗。つまり、阪神はGCに勝ち越し、巨人はCTいずれにも負け越し。この力関係がどう変化するのか。後半戦はここが焦点だ。
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