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第1戦 福留の一発でマエケン撃沈

 

 バックスクリーンにラインドライブの打球が伸びていく。2、3歩後ろに下がった中堅の丸が足を止め、打球を目で追った。昨年のクライマックスシリーズ(CS)で苦い思いをさせられた広島にリベンジを果たすための大事な初戦。ベテラン・福留のバットから放たれた一撃が、阪神にとって、大きな一撃となった。

▲6回一死走者なし。阪神・福留は3ボールからスライダーを強振し、ファウル。続く直球をとらえ、バックスクリーンに運び、これが唯一の得点にして決勝点となった



 開幕3戦目の試合中に、二塁の西岡と激突し、負傷。その後リハビリを経て4月中に復帰したが、打撃は一向に上向かなかった。それでも要所で試合を決める一打を放つなど、和田監督の信頼は揺るぎなかった。試合に出続ける中で、9月に入り、状態が上向き、下降線をたどった猛虎打線の中でひとり気を吐いた。

 特に広島戦。9月14日の7回に決勝本塁打。9月26日の6回には逆転の3ランと全盛期の勝負強さが戻ってきていた。シーズン終了後、CSまで期間が空いたが「その間でも、好調を維持してくれた」と和田監督は自信を持って先発に抜てきしたのだ。

▲我慢の投球を続けていた広島・前田だったが、福留に投じた痛恨の1球に泣いた



 試合前からその好調さが垣間見られた。打撃練習では、センター返しから始め、流し打ちとしっかりバットの軌道を確認しながら、最後は自分のポイントで確実にとらえる練習を繰り返す。打ち損じがなく、ほとんどの打球をスタンドに運んだ。そして仕上げの一打は、渾身のスイングで右翼席に放り込み、いい感触のまま試合に臨んだ。

「ランディー(が投げているとき)の相性も今年は良いし、(3-1の)バッティングカウントだから、思い切って振りました。打った瞬間届くなと思った」。一塁を回るときに自然に出たガッツポーズで甲子園のテンションは最高潮に達した。

▲8回を4安打1四球、無失点と好投した阪神先発のメッセンジャー。三塁を踏ませることのない完璧な投球だった



 ベテランらしく心と体が一致した一打。点が入らない展開の中で、カウントと状況を見極め、強振を選んだ。第1打席では、広島先発・前田の内角高め150キロ直球に詰まりながらもライト前に運んだ。第2打席は警戒され四球。そして6回の第3打席。前田が石原のサインに2度、首を振ったあとの150キロの直球。そこは数々の経験を積んできたベテランだからこそ、読み切って強振。しかも好調を維持しているだけに、強い球でも押し返せるだけのスイングがそこにあった。

 結局、先発・メッセンジャー、抑え・呉昇桓が広島を無失点。広島投手陣も踏ん張り、このソロがこの試合、唯一の得点だった。「大一番で何かしてくれる選手」と和田監督が信頼を寄せる男が、阪神に貴重な1勝をもたらした。

▲9回に登板し、広島のクリーンアップ、ロサリオエルドレッド、松山を三者三振で斬った呉昇桓[右]

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