週刊ベースボールONLINE

田中大貴のMonthly Column

田中大貴コラム 『松坂世代』あの夏から21年目の延長戦 「梵英心は苦しみや悩みを乗り越える自己解決能力に長けた男」

 

兵庫・小野高、慶大で活躍し、東京六大学リーグ戦では早大・和田毅[ソフトバンク]と真剣勝負を演じた元フジテレビアナウンサーで現スポーツアンカーの田中大貴は、1980年生まれの「松坂世代」の1人。そんな野球人・田中が、同年代の選手たちをプロ野球現場の最前線で取材した至極のエピソードを、コラムにして綴る連載第21回です。

日産自動車時代の梵英心。2005年の都市対抗では首位打者を獲得し、久慈賞を受賞。チームを準優勝に導いた


深夜のアルバイトと日産自動車内定秘話


「え? 出てないの?」

 思わず、大きな声で反応してしまいました。とある日のランチタイム。目の前に座る梵英心とはどうしても一度でいいから、ゆっくりと話してみたいと思っていました。同い歳、地方の公立高校から神宮球場でのプレーを目指し、駒大という強豪私大に進学した彼を知ったとき、自分も地方公立校から東京の私立大野球部に入り、神宮でのプレーを夢見ていたという点が重なって見えて、勝手にシンパシーを感じていました。

 そんな梵がこんな話をしてくれました。

「俺は大学4年生の秋は野球をやってないんだよね。その間はアルバイトをしていたかな。練習にも出る許可が下りなくて……。4年春が終わった時点でチームの方針で若返りを図り、来季以降に勝負を懸けるために、3年生以下を強化する方針になってね。4年生はほぼ卒部扱いだったから。だから立川にある製麺所で深夜アルバイトをしていたのよ」

 社会人野球は日産自動車でプレーし、プロの世界では広島東洋カープで12年間プレー。1000試合以上に出場してきた名遊撃手が、大学生が次のステップを考えるときに、最も重要視される4年生の秋季リーグ戦に出ていないなんて……一瞬、ときが止まったように感じ、「え? 今、何て? 何て言いました?」と聞き返してしまいました。

「『4年生の秋、何で出てなかったの?』ってことは同じ東都で戦っていた日大の館山(館山昌平、現楽天二軍投手コーチ)や、亜大の木佐貫(木佐貫洋、現巨人二軍投手コーチ)たちによく聞かれたよ。『いや、もうグラウンドには行かず・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

HOT TOPICS

HOT TOPICS

球界の気になる動きを週刊ベースボール編集部がピックアップ。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング