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東浜巨 投手 #16

ドラ1右腕が見せた真価

 



 10月5日、札幌ドームの日本ハム戦。下馬評でペナントレースの圧勝が予想されたソフトバンクは、144試合を戦い抜き、5年ぶりのBクラスという現実を突きつけられた。ただ絶望の縁にたたき落とされた試合は、別の角度から見れば来季への希望の光が差した9イニングだった。「一つずつ、アウトを取ることだけに集中していた。次へとつながる投球だと思います」

 ドラフト1位で3球団競合の末、獲得した即戦力右腕・東浜巨はマウンドで躍動した。初回無死、陽岱鋼を内角142キロで三振に仕留めると、8回一死、鶴岡から145キロで三振を奪うまでの7個はすべて見逃し三振。「低めのボールが浮き上がっていた」と高山投手コーチ(現オリックス投手コーチ)。リードした高谷も「最後の最後に東浜の持ち味を出せた」と評した。

 唯一、三塁に走者を背負った7回二死では2打席連続内角直球で見逃し三振だったアブレイユの裏をかき、外角の129キロスライダーで遊飛。最後に真価を発揮した。「後半はだんだん、調子を上げてきた。(来季は)次のステップに行けるんじゃないか」。秋山監督は来季の先発ローテ候補だと語る。

 オフにはプエルトリコのウインター・リーグへ派遣され、野球漬けの日々だ。チームメートになったWBCプエルトリコ代表でメジャー通算680試合登板の左腕・ロメロには「左と右は違うけど、同じ系統のボールは自分も投げる。ヒントになる」と投球の6割を締めるシンカーを学ぶ予定だ。

 屈辱と希望。その二つを同時に味わった。苦い記憶は残ったままだが、来季3年ぶりの日本一へ向けては、ベストゲームと呼べる戦いだったかもしれない。
オーロラビジョン

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