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多村仁志 外野手 #52

劇的な試合を生んだ一打

 



 今季のDeNAの売りはリーグ屈指の破壊力を誇った強力打線。四番に君臨したブランコ、シーズン途中から日本野球へと適応したモーガン。そして7年ぶりに古巣に復帰した多村仁志の存在が重量打線に厚みを持たせた。シーズン3度の7点差逆転勝ちは史上初。中でもこれからも語り継がれるであろう試合となったのが5月10日の巨人戦(横浜)だ。

 3対8の7回表に2本のソロで追加点を奪われ7点を追う厳しい展開に。だが球場内を包み始めたあきらめムードを一振りで振り払ったのが、途中出場の多村だった。7回裏に2ランを左翼席に打ち込むと、この一発が反撃への号砲となった。モーガンがソロで続き、勢いづいた打線は手が付けられなくなった。この回7連続長短打で6点を奪い、1点差にまで迫った。

 昨季は極度の貧打に苦しんだ。だがオフの大型補強が実り、今季は総得点だけでなくチーム打率も巨人に2毛差の2位の数字を誇った。チームはド派手な打ち合いを続け、その魅力は観客動員が昨年比で20パーセント増という数字となって表れた。多村は「久々に横浜に戻ってきて、あれだけお客さんが入っていた。こんな横浜スタジアムは見たことがなかった。やっていて楽しかったし、チームが変わってきているのが分かった」と言う。

 この試合で架けたアーチは計5本。18安打12得点の猛攻に観客は沸きに沸いた。1点ビハインドながらもDeNAは勢いで相手を上回り、9回一死一、二塁からサヨナラ3ランを放って劇的なエンディングをもたらしたのも多村だった。2013年版マシンガン打線の破壊力を最初に見せつけた試合という意味でも、周囲に与えたインパクトは絶大だった。
オーロラビジョン

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