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小熊凌祐 投手 #64

抜群の制球力で真のブレーク果たせるか

 



 小熊凌祐が2013年、最後に対戦した打者は天才とも最後の侍とも呼ばれた前田智徳だった。10月3日のマツダスタジアム。前田智の引退試合だった。つまり、偉大な打者にとって「最後に対戦した投手」が小熊だった。「偶然とはいえ、光栄なことです。でも、めちゃくちゃ緊張しました。絶対にストライクだけは取らなくちゃいけませんから」

 小熊も振り返るように結果は度外視していい局面だった。すべてストレートの3球勝負だったが、見逃し、ファウル、投ゴロ。“任務”は全うできた。

 思えば、前田智とのこの対戦に、小熊の長所や持ち味が凝縮されているのかもしれない。5年目のシーズンは初の開幕一軍を皮切りに、28試合に登板し、1勝0敗3ホールド。防御率も2.30と上々で、過去4年で計7試合登板だった小熊にすれば、プチブレークと言える数字を残した。

 とりわけ光ったのは制球力の良さだろう。27イニング1/3を投げ、与四球はわずかに2。ほぼ同じイニング(28)を投げた川上ですら13個与えている。「制球難で自滅しない」という中継ぎの条件は備えている。

 2011年には二軍で8連続奪三振、翌12年はウエスタン・リーグの最優秀救援に輝いている。その潜在能力は花開きつつある。24歳となる来季は一気に駿馬となれるか――。

「故障しない体を作ること。それが一番だと思っています」。13年も2度の登録抹消。右肩に不安を抱えているのが泣きどころだ。年明けはエース・吉見の自主トレに2年連続で入門する。タフな肉体を手に入れれば、谷繁新体制の秘密兵器となるはずだ。
オーロラビジョン

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