ファンも固唾をのむ投手戦。ロースコアであればあるほど、スタジアムの緊張感は増すというもの。今季の
大野雄大は1対0の完封を2度、やってのけた。
4月7日の
ヤクルト戦(神宮)と5月16日の
阪神戦(ナゴヤドーム)。本拠地の16日でマスクをかぶっていたのは谷繁監督兼選手。9回一死二塁で打者は鳥谷。追い込んでから谷繁監督のサインに首を振った。自ら選んだのはフォーク。思い切り腕を振って、空振り三振に仕留めた。覚悟の1球。チームの連敗を「3」で止める価値ある勝利にもなった。
「中継ぎを休ませるのも僕の仕事だと思う。中5日でもいい。フル回転します」
交流戦前の登板9試合で、防御率は1.83。堂々の成績だ。6イニング以下での降板も1度だけ。
オールスターに選ばれて、なおかつ活躍したい理由がある。5月20日に、佛教大の同級生だった美優奈(みゅうな)夫人が2人の地元・京都で3370グラムの長女を出産。守るべき存在が増えたことで、投球にも熱がこもる。
「健康に生まれてくれて良かった。責任感はすごくある。必ずパワーになります」
美優奈夫人は毎年、春の沖縄・北谷キャンプに大野を見に行く。名古屋にいるときは、ネット中継の動画を見ながら、夫の体調を心配する。大野らしくおどけた表現をすれば「何かチェックされているみたいで、ちょっと怖い」。そうはにかみながらも、「妊娠しているのに、沖縄まで足を運んでくれた。きっちり、成績を残したい」と語る。
子どもを授かって責任感の増した大野が、オールスターの舞台で成長した姿を見せる。