田邊監督がキャンプ時から「先発メンバーを固定したい」と公言してきた中で、昨季に続き今季も右翼と遊撃をきちんと固定できるかが最大の課題だ。その1つ、遊撃には大半で金子侑が起用されてきた。だが、打撃の調子が上がらず、40試合を消化した交流戦あたりからメンバーの入れ替えが行われた。そこでスタメンのチャンスが巡ってきたのが
渡辺直人だ。
社会人からプロ入りし、
楽天、横浜、そして
西武と渡り歩き、今年でプロ9年目となる熟練者への指揮官の信頼度は非常に高い。「遊撃だけではなくて、内野ならどこでもできるし、いつ、どこで出ても常に安定したプレーをしてくれる。監督として、こんなに頼りになる選手はいない」と、賛辞を惜しまない。
その言葉どおり、渡辺自身も「試合に出ても出なくても、目の前のやるべきことをきちんと果たして、常に準備をすること」を信条とし続けている。6月4日の
中日戦(ナゴヤドーム)、今季初の猛打賞を記録し、本人は「本当にたまたま」と一笑に付したが、たゆまぬ努力の日々の積み重ねが導いた結果であることは確かだ。
チームメートからの人望も厚い。ベンチスタート時には、「誰よりも声を出して、ベンチから点を取ろうという雰囲気を作り出してくれる」(岡田)。一方で、15歳下の森友が開幕から先発出場を続けている姿を傍から見守り、「精神的にも肉体的にもきついのでは?」と陰ながら慮るなど背中と人柄でチームに一体感をもたらしている。「優勝するチームがどういう雰囲気か、若い選手に感じてほしい」
決して率先してリーダーシップを執るタイプではない。それでも3年目を迎えた西武で、背番号8は欠かせぬ存在となっている。