きっかけの夏にしたい。
福井優也は済美高で2年の春に優勝、夏に準優勝を経験している、誰もが知るスターだ。
今季の
広島は入団以降、初めて優勝への道を突き進んでいる。だが「僕がいなくなってから勝ち出したので……」。押しも押されもしないエースだったあの夏とは違い、福井は貢献し切れていない歯がゆさを抱えている。
「後半戦、何とかチームに貢献したい。それだけです」。これから巻き返しの季節がやってくる。
オープン戦では絶好調だった。昨季9勝を挙げた実力そのままにキャンプも順調に過ごした。だが、開幕を迎えると一変。フォームのバランスを崩した。わずかな違いを修正できず、精神的なもろさも出た。復調を待った首脳陣の期待を裏切る形になってしまった。5月8日までに7試合に登板も、1勝2敗。防御率は5.83と荒れた。
「フォーム作り、体作りもやり直した」。時間を掛けてリセットした。
抹消されてから代役の投手が結果を残した。福井が調子を戻してもなかなか昇格の機会は訪れなかった。その間にチームは11連勝を飾るなど首位独走の態勢をつくった。今季から投手キャプテンを務める男は「挽回したいです。まだ取り返せると思う。後半戦で結果を出したい」と、燃えている。
緒方孝市監督からは後半戦のキーマンに指名された。夏を沸かせるのは高校時代から得意だ。済美高、早大と優勝の味も知っている。福井のエンジンは暖まっている。