真っすぐ前を見て、
梶谷隆幸が本音を打ち明けた。
「今はチームが勝つことが本当に大事。チームとして勝ちたい。個人的な成績と比べれば8:2……いや、それ以上かもしれないですね」
7月31日の首位・
広島戦(マツダ広島)。試合前練習を終え、大粒の汗を拭いながら「今は欲がないですね」と続けた。欲というのは個人タイトルのこと。2014年の盗塁王が「2年前とは気持ちが違う」と何度もうなずいた。2位の大島(
中日)に11個と大差をつけ、39盗塁で初の勲章を手に入れた快足男。「あのときは是が非でも取りたかったですね」と懐かしそうに笑みを浮かべた。キャリアを重ね、すっかり看板選手に成長。視野が広がるのは自然な流れだった。
2月の沖縄・宜野湾キャンプの守備練習中に左ワキ腹を負傷。思いもよらぬ長期離脱につながった。一軍復帰は5月4日の
ヤクルト戦(横浜)。4打数2安打1打点と好発進したものの、今度は打撃不振に苦しんだ。
6月を終えた時点で打率.209、5本塁打、16打点。「二番・中堅」を構想の軸にしていた
ラミレス監督も「調子を早く戻してほしい」と“元サヤ”の右翼で起用する配慮をみせた。すると、7月は打率.329と復調。18盗塁はトップの山田(ヤクルト)と8個差だが「意味のある盗塁、質の高い盗塁を心がけたい」とあくまでチームの勝利を優先する構えだ。12球団で唯一、CS出場がない
DeNA。背番号3の心にブレはない。